ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

防災と地域福祉

佛教大教授 岡崎祐司
 最近、“地域福祉の視点からみた防災”というテーマの講演依頼が少なくない。防災の専門家でもない私に講演依頼があるのは、災害時の救助や避難を考えるうえで、高齢者や障害をもつ人、病弱な人、妊婦など、より具体的な生活者をイメージしておかなければならない、という意識が高まっているからであろう。最近の災害では、避難に遅れる高齢者、災害情報が伝わっていない障害者などの問題がクローズアップされている。

 ともすれば避難訓練や防災対策は避難できる脚力のある人、文字や音声で情報が伝わる人、避難所の生活に数日でも耐えることのできる人といった一般的・平均的な住民像を前提にプログラムやシステムが組み立てられていることが多い。

 しかし、歩行が困難な人、文字では情報が伝わらない視覚障害者、音声では情報が伝わらない聴覚障害者、避難所の学校ではどうしてもトイレも寝ること困難な人、一時的にせよ集団生活には適応できず混乱する人など、実は多様な人々が地域には住んでいる。これらの人々は、災害時要配慮者、災害弱者といわれている。

 こうした人々への対応策は行政や専門機関だけではなく、地域における配慮や支援のシステムがどうしても必要になってくる。しかもそれは、日常の見守り活動や交流、障害・病気に対する理解が深まって行かなければ、災害時にだけうまく機能することはない。地域福祉は地域防災の基礎となる。

 また、災害発生後のボランティアの受け入れも、市町村単位の調整だけではなく、地域単位でのニーズの把握、受け入れ・提供の調整機能があったほうが有効である。地域における災害救援のボランティアコーディネーターの養成も検討すべきであろう。地域防災と地域福祉はつながっているのである。


おかざき ゆうじ氏 1962年京都市生まれ。佛教大大学院博士後期課程単位取得満期退学。同大助教授を経て、社会福祉学部教授。専門は福祉政策、地域福祉。著者に「現代地域福祉論」「現代福祉社会論」など。