ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

ささやかな「ガス抜き」

こどもみらい館 館長
浅野 明美
 昨年の6月から毎月1回、こどもみらい館で「館長の井戸端サロン」という名の事業を始めた。

 できうる限り時宜に即したテーマを選び、その日の「お題」としている。生後3、4カ月から2歳ぐらいまでの親子が20―40組、自由参加で畳の部屋に集まる。洛西や山科、伏見などの遠方からも、乗り継いで来られること、また毎回初参加の方々が数組以上来られるのもうれしい限りである。時におばあちゃんやお父さん方も参加され、大歓迎している。

 「お題」は、日常の生活の中で必要な知識や技術をきちんと持っていてほしいという思いから、意識して選んでいる。「生活リズム」「おもちゃの選び方」「スキンケア」「予防接種」「メディアとのおつき合い」「しつけ」などなど。

 「お題」についてミニ講話をした後、その内容についての質問を少し受ける。その後、訪室時に書いていただいたアンケートの中の任意記載の質問に、一人ずつお答えしていくのであるが、わたしにとっては緊張と楽しみの時間。

 一人一人のお母さんが、日々の子育ての中で一番しんどいこと、悩んでいること、聞きたいことが書かれている。百点満点の答えはできないかもしれないが、今まで小児科医として培ってきた経験で、可能な限り丁寧に答えている。ほぼ個別相談の形の受け答えを、他のお母さんたちは「こんなこと聞いてもよかったんや」「同じこと思ってたわ」「こうしたらええのんやわ」「今のままでエエやんか」などおのおのに聞き取り、納得して帰宅される。サロン終了後のアンケートの感想を読み、わたし自身もホッとする。

 わたしのささやかな「子育てのガス抜きサロン」は、はや1年半になろうとしている。子育て支援は親支援である。また支援する側も、親に寄り添い、ともに歩みながら、悩みや戸惑いをしっかりと受け止めていきたいと思う。


あさの あけみ氏 1950年京都市生まれ。大阪医科大卒業。76年、京都市に入り、京都市立病院小児科に勤務。西京保健所長、南区長などを歴任。2003年、京都市子育て支援政策監就任。05年から現職。保健福祉局医務監兼務。