ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

見直すべき障害者自立支援法

佛教大教授 岡崎祐司
 障害者自立支援法が施行されて1年半。10月6日に京都で障害者やその家族、福祉職員らが集まり、「障害者自立支援法に異議あり! 応益負担反対!」と街頭演説とパレードを行った。

 障害のある当事者から厳しい批判を浴びながら、この法律はスタートした。障害者福祉サービスを介護給付、訓練等給付、地域生活支援事業、補装具給付事業、自立支援医療の5つの制度体系に組み直すのがねらいである。

 障害者がサービスや医療を受けるたびに負担を強いられ、食費も障害者サービスから外され自己負担になり、サービスを提供する事業者も受け取る報酬が低く、経営が非常に厳しくなり人件費が抑制されるなど、早急に改善すべきさまざまな問題が指摘されている。

 障害者がサービスを利用することを“受益”とみなし、利用量に応じて負担を求める“応益負担”の発想は認められるのか。障害者者福祉サービスは、障害者が日常生活に支障をきたし、就労や社会参加ができない場合に、その状態をカバーし障害者の尊厳を守るために提供されるものである。

 競争主義的なわたしたちの社会は、市民ならだれもが確保されているはずの生活を障害のある人々に保障できず、社会から排除する恐れさえある。その状況を回復し、あたりまえの市民生活を実現するために障害者福祉がある。

 “受益”どころか、障害者の利益や権利が奪われないようにするのが、障害者福祉サービスの役割である。しかも、障害者の年金も労働における賃金も十分に保障できていない。“応益負担”を認める余地はないと考える。

 グローバル化のなかで、国際的にも障害者運動は発展している。日本政府は胸をはって自立支援法を国際社会に説明できるのだろうか。


おかざき ゆうじ氏 1962年京都市生まれ。佛教大大学院博士後期課程単位取得満期退学。同大助教授を経て、社会福祉学部教授。専門は福祉政策、地域福祉。著者に「現代地域福祉論」「現代福祉社会論」など。