ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

選択肢

こどもみらい館 館長
浅野 明美
 学会や出張の際に、目的地への交通手段を選ぶのは楽しみの一つ。先日の松山行きは、思いのほかすんなりと決まった。鉄道か、高速バスの陸路、および空路の3つの選択肢。乗り換えの回数、全行程の所要時間、運賃等々を検討した。複数回以上の乗り換えの必要な鉄道。空路では、今事故の多い機種の発着の空港であることや、空港バスの所要時間も考慮。結局、少々時間はかかるが乗り換えなしで駅から駅へ、そして料金格安の高速バスで行くことに決めた。

 人生の分岐点での選択もこのように楽しく決められれば良いが、こちらは場面場面により、いろいろとなかなか難しいことが多い。

 岐路では、考え得る限りの選択肢を並べ、自分なりに熟慮し、最も好ましいもの、効率の良いもの、少々困難は伴うがやりがいや成果の望めるものなどを、その時の状態や条件の下で最適と思われる(!)ものを選ぶ。

 迷うとき、悩むときは、視点を変えたり、気分転換しながら、選択肢を絞っていく。

 決して無理をしないで自然体で決めていくことができれば最高である。しかし、そのようにありたいと願っても、凡人の常、思わぬ欲が出たり、決断に時間がかかることもある。また、これこそ良かれと、勢い込んで選んでも、結果が出ずに落胆した苦い経験をしたことも何度かあった…。

 今ある人生、良かったと思うことも多いが、苦しい選択、つらい決断を迫られたことも少なからずあった。しかし、自らが選んだ結果の積み重ねが今の自分自身であることは紛れもない事実であり、経過や結果に責任を持つことは当然のこと。むべなるかな。

 今回の松山行きで、高速バスの選択は満足すべきものだった。往復とも予定時間より30分以上早く到着し、豊かな気分を味わうことができた。これからの人生、迷わずにすんなりと選んで行くことができれば良いのに…無理かな…。


あさの あけみ氏 1950年京都市生まれ。大阪医科大卒業。76年、京都市に入り、京都市立病院小児科に勤務。西京保健所長、南区長などを歴任。2003年、京都市子育て支援政策監就任。05年から現職。保健福祉局医務監兼務。