ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

サミットと母子保健

こどもみらい館 館長
浅野 明美
 高村正彦外相は、11月25日、来年7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)で、母子保健を中心とした「国際保健協力」を議題に取り上げ、母子健康手帳の導入などを国際社会に提唱する方針を明らかにされた。

 戦後数十年にわたる「わが国の母子保健」の成果が世界に発信され、評価され、また発展途上国への支援もすでに始まってはいるものの、さらなる国際貢献の「礎」の会議となってほしいと、心から願う。地味な仕事ながら、長く携わってきているものの1人として大変喜ばしいことである。

 妊娠届から始まり、母子健康手帳の交付、両親教室(旧母親教室)、出生届に基づく新生児訪問、4回の乳幼児健康診査、各種予防接種など、一連の一見至極当たり前に定着している各種事業は、世界の中でもレベルの高い、素晴らしいシステムなのである。妊産婦や乳児死亡の著しい低下も、優秀な技術と人材のたまものであり、最近の産科医・小児科医不足の現状は、皮肉なことであり、過去に現場にいたものとして寂しく、つらいものがある。正当な仕事内容の評価と、適切な処遇を切に望みたい。

 10年ほど前、札幌での会議の際、サミット開催のホテルを先輩より紹介され、共に宿泊したことがあった。600メートルの山の上のそのホテルからは、洞爺湖のみならず、かなたの山並みまでを展望し、息をのむ思いだった。立派なエントランスとロビー、英国調の仕様、おいしい食事など、「ここにしかないもの」を多く持つホテルだなあと感動した記憶がある。そのホテルでのサミットの成功を心から祈り、また「わが国の母子保健」の成果を改めて確認したいと思う。

 折しも、こどもみらい館は、就学前の子どもたちとその親の心と体の健康の保持増進を視野に、母子保健の視点からの事業にも取り組もうと、現在準備中である。心地よい風が背中を押してくれているように思う。


あさの あけみ氏 1950年京都市生まれ。大阪医科大卒業。76年、京都市に入り、京都市立病院小児科に勤務。西京保健所長、南区長などを歴任。2003年、京都市子育て支援政策監就任。05年から現職。保健福祉局医務監兼務。