ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

コミュニティ・ワーカーの配置を

佛教大教授 岡崎祐司
 地域福祉に関心をもっている関係で、地域調査や地域福祉活動のヒアリングの機会が多い。高齢者のサロン活動、子育て支援活動、障害者の支援活動など活発な活動をしている地域は少なくない。一人一人の住民が、自分の特技や得意分野を生かして活動に参加されている。そういう地域をみると、あらためて住民の共同の力に感心する。住みやすい地域づくりは、住民の関係づくりや結びつきが鍵になる。

 しかし、住民の共同を広げることに悩んでいる地域も少なくない。例えば、ある集合住宅地域では、自治会の加入者が減少し一割程度になっており、サロン活動の参加者もなかなか広がらないという。  また、高齢化と人口流出の続くある過疎地域では、行事や共同作業が多いが、担い手の負担が増えて限界にきているという。住民の孤独死や、独居の高齢者が転倒して数日も発見できなかった事例も少なくない。

 地域再生が話題になるなかで、住民の共同や「地域力」に注目と期待が集まっている。地域づくりは、住民主体が基本である。しかし、それはすべて住民任せでよいという意味ではない。

 共同や「地域力」を高めるには、その力を引き出し、住民をつなげていく仕掛けをリーダー層の住民とともにつくっていくコミュニティー・ワーカー(社会福祉協議会の専門員)が必要である。

 とくに、孤立やつながりの薄い地域にはコミュニティー・ワーカーが常駐して、地域活動を支援していくべきであろう。また活動が活発な地域でも、その発展にはコミュニティー・ワーカーの支援が有効である。

 国や自治体の地域支援策が充実してきているが、コミュニティー・ワーカーの大幅な増員など、思い切った人材投入も政策的に検討すべきではないかと思っている。


おかざき ゆうじ氏 1962年京都市生まれ。佛教大大学院博士後期課程単位取得満期退学。同大助教授を経て、社会福祉学部教授。専門は福祉政策、地域福祉。著者に「現代地域福祉論」「現代福祉社会論」など。