ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

魅力的な仕事

佛教大教授 岡崎祐司
 大学で福祉や保育の現場をめざしている学生を教えている立場からいうと、社会福祉の理念や歴史、理論をしっかり学んでほしいと思う。ただ、それはなんのためかというと、福祉実践の核心のようなものをつかんで、学生たちが将来、より魅力的な福祉の仕事、保育の仕事を生き生きと担っていくために、理論を学んでほしいのである。

 わたしの授業では、学生に福祉現場で働く職員の写真を数枚みせて、感想を述べてもらうことがある。写真から感じたことを素直に話しあって、学生の感性を手掛かりに、福祉実践の核心や魅力に迫れないか、と考えてのことである。

 そのなかに、障害者福祉施設で利用者の介助にあたっている若い男性職員の写真があった。若い職員と利用者が目線をあわせ、職員は右手で首の下を支え、左手で水分を補給しようとしている1枚である。

 「2人の目線から、福祉の仕事の中心には『信頼』がなければならないと感じた」「福祉職員の『手』は、利用者の命を支えているのだと思った」「この1枚から、生活を支える『援助』の大切さがわかるような気がする」などと学生たちは話してくれた。

 『信頼』も、命をささえる『手』も、生活を支える『援助』も福祉・保育の核心であり、またそれが福祉・保育の仕事の魅力でもある。そして、「写真から感じたことを深め、実践に活かすためにはもっと理論を学ぶことが必要だと思った」とある学生が感想で書いてくれた。

 この授業を受けたあと、学生の多くは福祉現場や保育所での実習に臨む。福祉・保育はとても魅力的な仕事である、それを伝えることがわたしの授業の最大のテーマである。しなやかな感性をもち、理論を深くつかみ、実践に向かう学生たちを頼もしく思っている。


おかざき ゆうじ氏 1962年京都市生まれ。佛教大大学院博士後期課程単位取得満期退学。同大助教授を経て、社会福祉学部教授。専門は福祉政策、地域福祉。著者に「現代地域福祉論」「現代福祉社会論」など。