ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

男性の「生涯未婚率」

こどもみらい館 館長
浅野 明美
 桜は葉芽に変わり、柳は見るたびに枝の長さを伸ばし、新緑の美しい、エネルギーに満ちた季節となってきた。競うように軒先に並べられた鉢植えの花も彩り鮮やかで嬉(うれ)しい。

 少子化の時代、色々な要因や背景があることは周知の事実であるが、大きな要因の一つに、「個人の選択の自由」という考え方がある。「結婚してもしなくてもどちらでもよい」、「結婚しても必ずしも子どもを持つ必要はない」。この項目について内閣府は、平成4年と16年の2回、12年の時を隔てて意識調査され、キッパリと「賛成」を示す人の割合が40%も増えていた。

 また、女性の晩婚・晩産化、出産適齢期の未婚率の上昇も右肩上がりであるが、この10年で変化の最も著しいのは、「男性の非婚化」である。50歳の時点で一度も結婚をしていない男性は著増の一途であり、「生涯未婚率」は平成17年度には遂に女性の2倍以上の15・7%となった。平成2年ころより女性の生涯未婚率を追い抜き、とうとう2倍を超えた。女性に魅力を感じない?感じても一歩踏み出せない? 一人が気楽?大きな失恋をした…? 理由はさまざまに考えられるが、結婚しない、したくない、できない理由を尋ねれば、百人百様となるかも知れない。

 咲いてこそ桜、根を張り子孫を残してこそ桜!? 桜守の佐野藤右衛門さんは、「今、桜言うたらソメイヨシノばっかりやから面白うない。その土地にしかない“地”(ぢ)の美しい桜がたくさんあるのんや」。その土地の個性的な桜を次代に繋(つな)げる気の長い大きな努力をされている。

 自然の摂理に逆行する理由は、恋愛観、社会経済的なこと、家族の事情…色々あろうが解決の努力は個々に、そして社会でなされているのだろうか。研究等もされているだろうが、「人間と人間の関係性」にキーワードの一つがあるように思うのは私だけだろうか?

 男女を問わず、人と繋がることの大切さは生涯を通して価値あることと思う。


あさの あけみ氏 1950年京都市生まれ。大阪医科大卒業。76年、京都市に入り、京都市立病院小児科に勤務。西京保健所長、南区長などを歴任。2003年、京都市子育て支援政策監就任。05年から現職。保健福祉局医務監兼務。