ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

福祉の仕事の専門性

佛教大教授 岡崎祐司

 社会福祉の仕事の専門性とはなにか、古くて新しいテーマである。医師の専門性、看護師の専門性、弁護士の専門性、教師の専門性というと、イメージしやすい。その専門家でしかわからない知識をもち、その専門家でしか使えない技術や技能を駆使する。専門用語を多用して、その専門職の間でコミーニケーションをはかる。こうした知識や技術、技能の“独占”は専門職のイメージにつながる。

 社会福祉の仕事は、人々の日常生活に深くかかわって援助をする。施設福祉なら食事や入浴、移動、外出、生きがいづくりなど、その人らしい日々の生活を援助する。相談機関なら、生活で困っている人の問題を整理し制度に結び付け生活を保障していく。地域福祉の領域なら、地域の福祉ニーズ調査や住民による福祉活動を支援する。日常生活の延長線上にある仕事で、特殊な技術を使うわけではない。専門職としてイメージがもちにくいかもしれない。確かに、独占的な技能を使っている仕事ではない。

 しかし、人々の生活を援助するには、その人の心の奥底にある願いに気づき、意欲を引き出さねばならない。表面的にみえている困った問題だけではなく、その深層にある本人も気づかないほんとうの困難さを見いださなければ、問題解決はできない。

 前向きに生きていこうとするクライアントの力を引き出し、寄り添って共に歩む仕事である。知識や技術、技能の“独占”というより、それらのクライアントとの“共有”に重点がある。そのための専門的教育が必要となる。

 カリスマ福祉職員はいないが、共感的で共同的で、実践しながらクライアントともに育つ仕事である。人を追い込みやすい現代社会のなかで、人間らしい陣地を守る仕事である。そこに福祉職の専門性を見いだすべきだと思う。


おかざき ゆうじ氏 1962年京都市生まれ。佛教大大学院博士後期課程単位取得満期退学。同大助教授を経て、社会福祉学部教授。専門は福祉政策、地域福祉。著者に「現代地域福祉論」「現代福祉社会論」など。