ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

貧困・孤立の結果と原因

佛教大教授 岡崎祐司

 6月14日・15日に京都で日本地域福祉学会が開催され、京都府や京都市の社会福祉協議会の職員の方々といっしょに、「貧困・孤立と地域福祉―尊厳ある暮らしを探求する京都からの発信」というシンポジウムを担当した。

 都市における孤立者支援や過疎地の地域問題、在日外国人支援を行っているNPO(民間非営利団体)の活動報告と研究者のコメントで進めたのだが、50人という予想を上回る150人近い参加者で、座席が足りなくなるほどの盛況だった。高齢者や障害者をめぐる問題が焦点になったが、社会福祉協議会の職員、地域福祉活動を実践している住民も参加され、高く議論も盛りあがった。

 ほんの少し前までは、“一億総中流化”や、“豊かな社会”といわれていた。しかし、格差拡大や貧困、社会的孤立の深刻化は否定できない現実であり、関心も高まっている。

 貧困な生活は、人間関係の希薄さや孤立をひきおこす。見通しのない生活は、その人を人前にでることを遠慮させ、生活そのものへの意欲を弱め、地域でのつながりも弱め、医療や福祉の専門職とのつながりをも弱めていく。大都会で発生する高齢者の孤立死は、その最悪の結末である。

 孤立防止や生活の見守り、つながりづくりなど、住民福祉活動ができることは少なくない。もちろん、地域だけでは問題解決はできない。貧困、孤立を見逃さない行政や社会福祉専門職の役割と責任は大きいはずである。

 しかし、これらは“結果”への対応である。貧困・孤立は働いていない人たちだけではなく、ワーキング・プアなど働く人々の問題にもなっている。少なくない人々を貧困・孤立に追い込んでいく、ここ数年の日本社会の激変とは何なのか、こうした“原因”にもメスを入れる時期がきているようにおもう。


おかざき ゆうじ氏 1962年京都市生まれ。佛教大大学院博士後期課程単位取得満期退学。同大助教授を経て、社会福祉学部教授。専門は福祉政策、地域福祉。著者に「現代地域福祉論」「現代福祉社会論」など。