ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

住民によるまちづくりの計画

佛教大教授 岡崎祐司

 まちづくりをどのように進めていくのか、その決め手のひとつは「計画」である。各市町村は都市計画をもっていて、土地利用の仕方や開発、公園や緑地の整備、道路の整備を定めている。福祉サービスの整備についても、いくつかの福祉計画がある。地域における住民主体の福祉活動を推進する社会福祉協議会も、地域福祉活動計画を策定している。「計画」をつくるには、専門的知識が必要とされるので行政や専門機関だけがつくるものと思われがちである。

 しかし、小学校区や自治会のエリアで、住民の力でまちづくりの「計画」や「指針」を策定している動きも広がっている。京都市内の社協活動のリーダーが集うセミナーのコーディネーターをしたときに、西京区の福西学区社協の活動指針策定の報告を聞く機会があった。何年かの議論を経て、地域の福祉ニーズをふまえて、大切にすべき福祉の理念や考え方、活動の指針をまとめられたものだ。学区社協の役員層が交代しても一貫性をもって活動にとりくめるように、またそれまでの経験や課題を共有することができるようにと、住民である福祉活動の担い手のみなさんの力でまとめられた、水準の高い力作である。

 福祉活動を含めたまちづくり全体を進めていこうとしていくときに、住民の力で「計画」を策定していく効果は大きい。策定の過程は、地域の実情や要求をつかみ、課題を明らかにすることで、認識を共有できる。また、目標や指針を定めるなかで、こんな地域に暮らしたい、こんな地域にしたいという主体的な議論が喚起され参加の意欲や姿勢も高まる。また人口の高齢化や地域産業の動き、開発の状況などから地域の未来予測をすることにもなる。専門家や行政の援助は必要であるが、生活圏を基本に住民が自らのまちづくり計画や活動の指針をもつ意義はこれから大きくなっていくと思う。


おかざき ゆうじ氏 1962年京都市生まれ。佛教大大学院博士後期課程単位取得満期退学。同大助教授を経て、社会福祉学部教授。専門は福祉政策、地域福祉。著者に「現代地域福祉論」「現代福祉社会論」など。