ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

発達障害について

精神科医 定本ゆきこ

 昨今、発達の遅れはないが、偏りがあるという意味での「発達障害」を有する子どもたちや人々が増えているといわれる。

 知的な遅れはないのであるが、人とうまくコミュニケーションがとれず、やりとりがかみ合いにくかったり、表情や状況から相手の意図や気持ちを察することができない。込み入ったパソコンの操作などは難なくできるのに、社会性が乏しく幼稚で、場にそぐわない言動を取ったり常識的な振る舞いができなかったりする。1つの狭い領域のことには熱心に取り組んだり知識も豊富なのだが、その他のことには無関心、無頓着であったり、他にも、不器用でボール運動などができなかったり、大きな音が苦手だったり、ある種の味が食べられないというような感覚過敏がある場合もある。

 これらはすべて生来から有している発達のアンバランスによる特性なのであるが、問題は、それが周囲に正しく理解されていないことで増幅される「生きにくさ」である。「発達障害」というものが知られていないところでは、そのような特性からくる言動は、悪気がないのに、わがままや自分勝手であると誤解されてしまう。ある種のことはよく出来るのに、極端にできないことがあると、怠けている、努力が足りないなどと見なされ、とがめられてしまう。

 今や、日本の社会も、バリアフリーが進んでいる。さまざまなハンディを持った人々が、支援や手助けを得ながら、街で普通に暮らし始めている。建物の入り口や通路のスロープしかり、切符の自販機の点字案内しかりである。このハンディがあると、どのようなことで困り、どのような不都合があるのか、そして、どのような手助けが役に立つのかという知識と理解、そして想像力があれば、ちょっとした工夫と手助けでバリアーはなくなっていく。

 発達障害は、最も新しい障害。まだまだ正しい理解が広がっているとは言い難い。要は、知ることを通して違いを認めるということである。「みんな違ってみんないい」。誰もが生きやすい社会に近づいていけばと思う。


さだもと ゆきこ氏 1960年岡山県生まれ。奈良県立医科大卒業。淀川キリスト教病院などの臨床研修を経て、京都大学病院精神科入局。91年から京都少年鑑別所勤務。著書に「子どもの姿と大人のありよう」「子どもの心百科」(以上共著)など。