ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

父子家庭への支援策を

佛教大教授 岡崎祐司

 格差と貧困の広がりのなかで、厳しい雇用と生活状態におかれている母子家庭への支援がクローズアップされている。しかし、おなじひとり親家庭である父子家庭への理解と関心は必ずしも高いとはいえない。

 男親だから経済的困難から免れているわけではなく、経済情勢の厳しさとともに生活が不安定になっている家庭は少なくない。

 子どもの病気、親自身の病気など緊急時の対応、日々の家事負担、社会的な孤立など母子家庭と同じように福祉ニーズがあり、社会的な支援が必要である。

 まだ10自治体程度だが、児童扶養手当に準じて父子家庭への経済給付を実施している。京都府内でも以前から父子福祉事業の取り組みがあり、当事者組織として父子福祉会もいくつか結成され、府内の連絡会議も20年近くも続いている。

 しかし、当事者の立場にたった父子福祉を進めるには、父子家庭の実情を把握する社会調査が必要である。そこで、京都府民生児童委員協議会と京都府社会福祉協議会が連携して父子世帯のアンケート調査がこの秋に実施された。

 その結果は今後集計され、まとめられると聞いているが、父子福祉への積極的な取り組みとして、注目されている。

 ひとり親家庭は生活や健康への不安が大きく、親としてのストレスも小さくない。職場の理解も十分とはいえないだろうし、利用できる施策も少ない。ひとり親の当事者組織に参加している男性は多いわけではない。

 最近は個人情報保護が大きな壁になって、組織が個人にアプローチすることが難しくなっている。インターネットで情報発信しコミュニケーションをとっているひとり親男性も少なくないが、ひとり親がひとりで頑張ることはたいへんなのである。

 父子家庭への理解を深め、支援策を構築していく必要がある。


おかざき ゆうじ氏 1962年京都市生まれ。佛教大大学院博士後期課程単位取得満期退学。同大助教授を経て、社会福祉学部教授。専門は福祉政策、地域福祉。著者に「現代地域福祉論」「現代福祉社会論」など。