ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

子どもの貧困に手を打つべきだ

佛教大教授 岡崎祐司

 市町村の実施する就学援助を受ける児童、生徒が急増している。いま、全国で140万人を超えているのではないだろうか。就学援助は、生活保護受給世帯や同じ程度に困窮している世帯の小学生・中学生の学用品、給食費などを補助するものである。2006年、文部科学省の調査によれば、「親の働く企業の倒産や解雇」や、「離婚などによる母子・父子家庭の増加」が就学援助受給の理由として最も多かった。子どものいる世帯の貧困が、広がっている。

 かつて就学援助の財源には、二分の一の国庫補助があてられていたが、05年から地方自治体の一般財源にかえられた。そのため、財政の厳しい自治体では支給できる所得の認定基準が引き下げられ、給付の額も引き下げられた。地方分権の考え方でいえば、国庫補助負担金が地方交付税に組み替えられるのは正当かもしれないが、実際には最優先すべき貧困世帯の子どもへの援助が切り下げられる、という事態が起こっている。この先、景気の悪化が続けば、就学援助を必要とする子どもはいっそう増加するだろう。しかし、同時に財政悪化を理由に就学援助の受給を厳しくする自治体も増加しそうである。

 みんなとお弁当を一緒に食べられない、穴のあいた靴を履き続ける、修学旅行に行けない、そんな子どもが増えていて教育立国などありえない。貧しさに耐えきれず、心を不安にさせている子どもを救えなくて、教育先進国などありえない。就学援助の国庫補助金は150億円程度であったが、この程度の予算は国としても手当てできるはずである。国民に配るお金をめぐって、国会議員が受け取るのか受け取らないのか、景気対策か生活支援かが政治の論点になっているようである。救うべき子どもの貧困への対策を打たないで、何を議論しているか。大きな疑問を抱いているのは、困っている子ども自身であろう。

 4月からヴォーリズ記念病院ホスピス長の細井順さんが執筆します。


おかざき ゆうじ氏 1962年京都市生まれ。佛教大大学院博士後期課程単位取得満期退学。同大助教授を経て、社会福祉学部教授。専門は福祉政策、地域福祉。著者に「現代地域福祉論」「現代福祉社会論」など。