ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

ソーシャルワ―カーデー

同志社大教授 上野谷 加代子


 社会福祉関係の全国的な職能団体や大学などの養成機関・施設、社会福祉関連学会などからなるソーシャルケアサービス従事者研究協議会は今年、毎年7月20日を「ソーシャルワーカーデー」と決めた。「人とつながり、社会をかえよう」が合言葉だ。

 国際ソーシャルワーカー連盟が提唱した「世界ソーシャルワークデー」が毎年3月第3火曜日に決まったことに呼応しての決定である。

 今は世界的な不況が社会を覆いつくしそうな混迷の時代である。日本においても私たちの生活は脅かされ、種々の福祉ニーズが増大・深刻化・先鋭化している。自殺者が毎年3万人を超えているという現実がある。子どもや高齢者への虐待、いじめ、不登校、家族解体、介護放棄・難民、障害者の教育・雇用問題、孤立化する子育てなど生活問題は多発している。気づいていないか、見ないようにしているかは別として。

 このような中で、220万人近い社会福祉従事者が、問題解決に向けて、高齢者施設や保育所などの児童施設、障害者福祉施設、社会福祉協議会などで働いている。

 しかし、複雑な生活課題を本人の尊厳を失うことなく解決していくためには、高度な専門的知識や方法と職業倫理・価値を身につけた専門職の養成と配置が必要である。このような社会福祉専門職であるソーシャルワーカー(日本では社会福祉士および精神保健福祉士をいう)の社会的認知度は高いとはいえない。

 ソーシャルワーカーは、「平和を求め、人権と社会正義の原理」にのっとり、すべての人びとの幸せづくりに貢献する専門職としての活躍が求められている。そのためには、国民の関心と理解を広げると同時に、彼らの職域を福祉事務所や児童相談所はもちろん、学校、刑務所、職安などでさらに広げ、雇用を積極的に促進していくよう行政に働きかけねばならない。


うえのや かよこ氏 同志社大学大学院社会学研究科教授。
1949年生まれ。大阪市立大学大学院修士課程社会福祉学専攻修了。研究テーマは地域福祉方法論。日本福祉教育・ボランティア学習学会会長、日本地域福祉学会副会長。