ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

名刺両面作戦



さわやか福祉財団理事長
堀田 力



 私は、全国の仲間たちと、18年間、ボランティア活動を広めてきた。主婦や定年退職した人たちの参加には、目を見張るものがあるし、子どもや若者も、抵抗なくボランティアをしてくれるようになった。

 唯一、難攻不落なのが、働く人たち、特にサラリーマン層である。フォーラムを開いたり、ボランティア体験行事を催したり、社会貢献賞で会社や個人を表彰したり、会社の人事部から勧めてもらったり労働組合から働きかけたり、子どもを通じて誘い出したりなどなど、思いつきそうなことは大抵やった。やればやっただけの効果はある。だが、それだけである。広がらない。ワークライフバランスの運動も仕掛けてみたが、相変わらずワーク1本で、ライフがない。

 そこで、今回仕掛けようとするのは、名刺両面作戦である。

 日本のサラリーマンは、必ず名刺を出す。その裏に、自分が所属するNPOの名称を印刷してもらう運動である。NPOでなく、町内会でも趣味の会でもよい。

 それは、「自分は会社の仕事をしているだけでなくて、こんな社会活動もしている幅の広い人間ですよ」という自己紹介になる。相手の評価は深まるし、会話の糸口にもなる。

 また、会社の間接的社会貢献のPRにもなるし、NPOのPRにもなる。

 名刺に刷るためには、好きなNPOを選んで参加しなければならない。それがこの作戦の狙いである。それぞれ一つくらいは、NPOにかかわってほしい。ただ、参加といっても会員になって会費を払うだけでもよい。それも大切な社会参加活動である。

 そのようにして活動が広がれば、日本の社会は住みやすく活気のある社会になってくる。

 そして、この作戦には、お金も人手もかからない。あなたやあなたの会社が、始めてくれさえすれば、広がっていくのである。早速、やってみませんか。


ほった つとむ氏 1934年宮津市生まれ。京都大法学部卒業。東京地検特捜部検事、最高検検事などを経て、91年に法務大臣官房長を最後に退職。現在、ボランティア活動の普及に取り組む。弁護士。著書に「おごるな上司!」「心の復活」「少年魂」など。