ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

2015年問題

同志社大教授 上野谷 加代子


 団塊世代が65歳に突入する2015年には、日本の平均高齢化率が25%を超えると予測されている。この「2015年問題」に象徴される介護、医療、年金などの諸課題は、個人や家族の生活はもとより、これからの社会のあり方にも大きな影響を及ぼし、諸政策の大変革を余儀なくされていくだろう。

 多くの健康な住民にとっても、会社や種々の活動の第一線からの撤退から生じる生活の変化や老いの現実を家族とともに受容することは容易ではない。団塊シニアが生き生きと暮らすことができるどうかは、あとに続く世代の仕事や家庭生活への夢や希望に大きな影響をもたらす。

 定年退職後、お金が乏しくなっても、役職がなくなっても、一人暮らしになっても、少々認知症になっても、互いに上手に迷惑をかけあいながら、社会的に支えていく、「生きる術」を作法として身につけ、助け合いの文化を地域のシステムにしていくことはできないのであろうか。

 団塊シニアは、戦後の混乱期に生まれ、新しい教育を受け、家族機能の変化、経済発展を実感し、国際化・情報化の波に乗り損ねまいと会社や種々の組織で努力してきた人たちである。また、女性の地位向上、保育所等の整備、介護の社会化の浸透など、課題はあるとはいえ養育や介護の考え方を大きく変化させた世代でもある。親の介護問題や年金・医療問題、自身の体力の減退など今後の悩みは深いが、常に新しいものを作り出してきた知識・技術、問題解決能力、政策形成力を持ち合わせる貴重な層でもある。

 団塊シニアは、今こそ、現実社会を直視し、持てる力を寄せ合い、多くの仲間と協働して課題解決に向けて実践していくことが期待されている。今回の総選挙は「2015年問題選挙」と称してもよいと思う。団塊世代の一人として次世代とともに持続可能な福祉社会づくりへ向け、もうひと働きしたい。


うえのや かよこ氏 同志社大学大学院社会学研究科教授。
1949年生まれ。大阪市立大学大学院修士課程社会福祉学専攻修了。研究テーマは地域福祉方法論。日本福祉教育・ボランティア学習学会会長、日本地域福祉学会副会長。