ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

高齢者と子ども



さわやか福祉財団理事長
堀田 力



 京都会館大ホールの大舞台で、整然と並んだチアガールたちの美しい脚が、リズムに乗って跳ね上がる。その列がさっと開くと、やんやの拍手を受けて輝く衣装の男が登場、美女と腕を組んで脚を振り上げる。

 正直に言ってあまり長いとはいえない脚の持ち主は高畑敬一さん、79歳。少し前の本欄で紹介したニッポン・アクティブライフ・クラブ(略称NALC)の会長さんである。中山道を歩き切った記念の式が、新型インフルエンザのために8月10日に延期された。ちなみにチアガールたちの平均年齢67歳、少し離れた席で見れば、脚はタカラヅカ並みと断言できる。

 15年前、高齢者の生活を支えることからスタートしたNALCの活動には、ここ数年、静かな変化が現れている。子育て支援の活動が、自然な形で増えてきているのである。全国から集まって歌い、踊りと元気いっぱいに特技を披露する会員であるから、そのボランティア活動も型に縛られない。地域のニーズを敏感に掴んで、支援の幅を広げていく。

 この傾向は、NALCより3年ほど先に、高齢者の生活支援のボランティア普及活動を始めたわがさわやか福祉財団についても、まったく同じである。介護保険制度がスタートして少しゆとりができた団体は、その対象を子どもたちに広げ始めた。

 実際、高齢者と子どもたちは、よく合うのである。幼児たちは、ゆったり構えるおじいちゃん、おばあちゃんに安心し、のびのびと行動する。ほめられると有頂天になり、いきいきとお手伝いをする。一人前扱いされるのが、無上の喜びらしい。それがどれほど子どもたちの自立心や助け合う心を育てることか。

 今度の総選挙では、子育て支援策が焦点になっている。それは好ましいことだが、支援策と併せて、地域全体で子育てを支えていこうというソフトを広げないと、子どもの心を冷たい競争でゆがめる傾向が強まりかねない。


ほった つとむ氏 1934年宮津市生まれ。京都大法学部卒業。東京地検特捜部検事、最高検検事などを経て、91年に法務大臣官房長を最後に退職。現在、ボランティア活動の普及に取り組む。弁護士。著書に「おごるな上司!」「心の復活」「少年魂」など。