ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

地域福祉計画

同志社大教授 上野谷 加代子


 社会福祉新時代として、「地域福祉の主流化」がいわれる時代となった。しかし、「地域福祉」の概念が市民に共有されていないし、サービスの実態が伴っていない。行政関係者、福祉・医療・保健関係者ですら理解不足は否めない。

 「社会福祉」が、幸せ探しと幸せ創(つく)りだとしたら、「地域福祉」は、その幸せを、「誰が」「誰と」「どこで」「どのように」創っていくのか、にこだわる。生活圏域としての地域社会で、福祉当事者や住民(市民)の参画によって、地域を包括するケアシステムを形成しようとするものだ。旧態依然の福祉の創り方は通用しない。

 1951年につくられた「社会福祉事業法」が2000年に改称・改正された「社会福祉法」では、「地域福祉」という言葉が明文化され、住民はサービスを受ける客体から、幸せを自分たちで創り、活用する主体と位置づけられ、地域福祉計画策定が行政の努力義務となった。

 しかし、計画策定の実施状況は芳しくない。全国の市区ですでに実施済みは63・6%、策定予定を含めると81%だが、町村では実施済みは27・1%、実施予定を含めても43・9%である。地域格差が出ている。市町村合併の影響や実質的な住民(市民)参画を求められるなど手間がかかることへの躊躇(ちゅうちょ)などから、模様眺めの市町村もあるという。

 京都府は実施済みと実施予定を入れて6割で、滋賀県は6割を切っている。実施率では京都府が全国16位、滋賀県は22位である。ちなみに大阪府は全市区町村が実施している。もちろん、行政計画としての地域福祉計画策定であるから、首長はじめ、議会、行政幹部職員の意思決定が必要となる。また、車の両輪となるべき地域福祉活動計画を市町村社会福祉協議会が策定しているかどうか、も大きく影響するだろう。

 それにしても福祉新時代への変化を読みきっていない自治体がまだ多いのは残念だ。


うえのや かよこ氏 同志社大学大学院社会学研究科教授。
1949年生まれ。大阪市立大学大学院修士課程社会福祉学専攻修了。研究テーマは地域福祉方法論。日本福祉教育・ボランティア学習学会会長、日本地域福祉学会副会長。