ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

居場所サミットのお誘い



さわやか福祉財団理事長
堀田 力



「うちはにぎやかな家でね、子どものころはご近所のいろんな人が遊びに来やはって楽しかったわァ」と九条大宮近くに住む増田隆子さんは目を細める。三条堀川近くの染め物の町で育った私も、町内の床几(しょうぎ)に大人も子どもも群がってヘボ将棋に口出ししていた情景を思い出し、隆子さんに共鳴する。

 地域のつながりが薄れ、いつしか途切れていたその楽しさが、少しずつ復活してきた。

 一つは8年前から隆子さんが始めた生協の個人引き取りステーションである。地域の方々の注文を受けて増田さんとスタッフ3人が品物を分け、そろうと生協の組合員が取りに来る。お年寄りが来ることもあれば、子どもが来ることもある。来たついでに隆子さんとおしゃべりし、中には悩みごとの相談をしていく人もいて、増田さんの家は何となくご近所の居場所のようになっていった。隆子さんも、それが楽しい。

 もう一つは、義母美代さんと共に習い始めた絵手紙である。八十を過ぎて身体が不自由になった美代さんは、無聊(ぶりょう)を慰めるため、ご近所の絵達者な方から絵を習い始めた。隆子さんも一緒に習い出し、さらにご近所から年配の生徒さんたちが加わってきた。その輪が語らいの居場所になった。

 2003年美代さんが亡くなった後、隆子さんは思い切って上がり口の畳の間を改築し、土足のままで集える椅子(いす)・テーブルの間にした。地域の誰もが気楽に入り、楽しくおしゃべりできる場所にしたかったのである。子どものころに染み込んだ隆子さんの楽しみを実現したいと、夫二三夫さんも積極的に協力した。居場所には、「よっとーくりゃす」という看板を掲げることにしている。

 そういう気楽な居場所をあちこちに広めたいと願って、私たちは来る3月13日(土)の午後1時半から、岡崎のみやこめっせ地下1階で、「ふれあいの居場所普及サミット」を開く。参加費500円。いろんな集まり方の話を聞いてみませんか。


ほった つとむ氏 1934年宮津市生まれ。京都大法学部卒業。東京地検特捜部検事、最高検検事などを経て、91年に法務大臣官房長を最後に退職。現在、ボランティア活動の普及に取り組む。弁護士。著書に「おごるな上司!」「心の復活」「少年魂」など。