ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

新・国際交流の楽しさ

同志社大教授 上野谷 加代子


 韓国(ソウル)に同志社大学で社会福祉学を専攻する大学院生たちと、1週間ほど滞在している。

 5回目の訪韓にして、やっとゆっくり、街を歩き、食を楽しみ、人情に触れた。おまけに体調を崩した私はハリ治療と漢方薬のお世話になった。

 いままでは、学会などの学術協定に基づく国際セミナーなどへの出席であり、仕事をして、すぐ帰国という具合だった。関西空港から約2時間という近い国への出張は、今や、東京同様、すぐに行けてすぐに帰れる旅となったからである。

 今回の訪韓は、韓国の大学との英語による大学院生同士の研究発表会であった。

 リハーサルを積んだとはいえ、日本の院生たちの発表は堂々としたもので、笑いあり和やかに進んだ。その後の会食やフィールドワークをとおして、韓国における認知症ケアや自殺予防、多文化共生などの地域福祉活動などの一端に触れることができた。

 日本と同様の課題をかかえながら、先駆的に専門職が市民とともに解決していく具体的プログラムの展開に、学生は率直に感嘆し、多くを学んだ。「西洋モデル」ではなく、「東アジアモデル」に、親近感を感じたという。

 もちろん韓国の院生たちの英語能力は高く、日本の語学教育およびプレゼンテーション教育の重要性を再確認させられた。豊富な内容をいかに効果的に伝えあうか、は課題である。

 今回の訪韓では、あらためてさまざまなことを教えられた。語学能力とともに人として交流する能力、互いのこと互いの国のことを理解しあう気持ち、そしてどうすれば高齢社会をよくできるのか、福祉課題の解決とは? 若い世代は前向きで柔軟だ。グローバルに物事を考える幅広い教養の涵養(かんよう)に期待する。

 日韓学術交流の新たな時代は、「若い研究者や大学院生たち」が主役となると確信した。


うえのや かよこ氏 同志社大学大学院社会学研究科教授。
1949年生まれ。大阪市立大学大学院修士課程社会福祉学専攻修了。研究テーマは地域福祉方法論。日本福祉教育・ボランティア学習学会会長、日本地域福祉学会副会長。