京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●コラム「暖流」
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。 交流の場としての百貨店
同志社大教授 上野谷 加代子
働く女性にとって交通の要所にある駅前や駅の近くにあるデパート(以下、駅デパート)は便利で、楽しい場所だ。
私は、最近では、用途によっていくつかの駅デパートを使い分けている。プレゼントを求める場合は、日常の小物は、食料品は、パンは、お酒はどこそこという具合である。その中でも、私のお気に入りは日常生活を支えてくれるデパ地下と婦人服売り場が整っているところだ。 デパ地下では、試食や試飲ができる。売り手と買い手がお互いに講釈しあっている光景が面白い。婦人服売り場では、ファッションショー気取りで、いろいろ試着できるのがうれしい。ここでは、「よく似合っている」とか「こっちの方がどうかしら?」と、お客さん同士のコミュニケーションがある。 私が十年来、お世話になっている駅デパートの婦人服売り場の店長はこう言いきる。 「売り上げを伸ばし、全国トップになろうと思った時期があるが、今では、売り上げよりお客様に、夢や幸せを、感じてもらい、コミュニケーションの場の提供。そして、自分も楽しむようにしているの」 その姿勢が効をあげてか、売り上げを伸ばしている。そして、「若手社員に、私のDNA(考え方)を伝え、残すことも仕事」とも語る。 学会メンバーとしても教員としてもベテランと言われるようになった私も、若い人たちに何を伝えるのかを考えている。教えられることが多い。 1カ月、休みなしで東奔西走した私にとって、自分を取り戻し、楽しく、遊ぶことのできる場として駅デパートはある。 働く女性だけでなく、男性も、そして高齢者にとっても、他者と交流したり、知らない地方や諸外国の品物に触れたり、食べたり、種々体験できる空間である。 京都駅にも新しい駅デパートができ、さらに、楽しみが増えた。一度行ってみようと思っている。 うえのや かよこ氏 同志社大学大学院社会学研究科教授。 1949年生まれ。大阪市立大学大学院修士課程社会福祉学専攻修了。研究テーマは地域福祉方法論。日本福祉教育・ボランティア学習学会会長、日本地域福祉学会副会長。
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