京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●コラム「暖流」
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。 猛暑と閉じこもり
同志社大教授 上野谷 加代子
今年の夏は格別暑かった。「ノーネクタイ、半袖シャツで」と案内された各種委員会にも、長袖上着で通してあせもができた。栄養不足か?と気になるが、まだ若いからだと変な納得をしている。
環境問題と身体のことを考えて、クーラーを可能な限り避けてきた私であるが、今夏は一日中お世話になっている。 しかし、まちでは建築現場で働く人々、交通整理や巡回中の警察官、子どもの安全補導のボランティアさん、多くの人たちが炎天下で長袖で汗して働いている。農業・漁業従事者もしかり。 彼らが働いているそばをクーラーの効いたタクシーで通り過ぎる時、申し訳なさと感謝の気持ちが生じる。私たちの生活基盤である食物や道路・建物・住居を、直接手足を使ってつくっている人たちに、猛暑手当を差し上げたくなる。 一方、高齢者にとってもこの夏は熱中症、消えた高齢者と、苦難の連続であった。猛暑は高齢者を外出させない状況をつくりだし、交流をさまたげ、孤立させていく。いきいきサロンや種々の行事への参加を見送らざるを得ない。冬の閉じこもりを避ける工夫をしている雪国から学ぶことも多い。 閉じこもりには四つあるといわれる。家への閉じこもり、部屋への閉じこもり、寝床への閉じこもり、自分への(心を閉ざす)閉じこもり、である。酷暑は閉じこもり症候群を増加させる。 酷暑も冷夏も困る。大雪も暖冬も困る。四季があり自然に恵まれている日本に暮らす私たちは、自然に注文をつける勝手な人間になっているのかもしれない。 暑かろうが寒かろうが、人間のつながっていく力で、子どもも高齢者も、皆閉じこもらず交流しよう。お祭りや盆踊り、地蔵盆は最高の交流イベントである。もし、この夏閉じこもりがちだった方々は、これからの地域の行事に参加してみてはどうだろうか。 うえのや かよこ氏 同志社大学大学院社会学研究科教授。 1949年生まれ。大阪市立大学大学院修士課程社会福祉学専攻修了。研究テーマは地域福祉方法論。日本福祉教育・ボランティア学習学会会長、日本地域福祉学会副会長。
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