ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

最後まで自宅で



さわやか福祉財団理事長
堀田 力






 最後まで住みなれた自宅で暮らしたい。たとえ身体が動かなくなり、面倒をみてくれる家族がいなくなっても。

 厚労省から委託を受けている巡回サービスの研究会で精力的に調査した結果、かなりの範囲で自宅で最後まで支えられることがわかってきた。

 食事も自分では食べられず、おむつをしていても、自宅で一人で暮らせる。朝は歯磨きや衣類着脱の手助けから朝食の介助、おむつ交換が必要だが、これはヘルパーさんが定時に訪問して世話をすればよい。昼食、夕食の介助も定時訪問でよいし、おむつ交換も、下痢とか特別なことがない限り、大体決まった時間に訪問して行えばよい。入浴は、デイケアへ行って助けてもらった方が楽しいだろう。

 ただ、夜間に水が飲みたくなったり、体位を変えてほしくなったり、時には歩こうとして転倒したりする。そういう時は、コールである。実際に夜間サービスを実施しているところを調査すると、呼び出し音が鳴ってから平均で15分程度、長くて30分程度で訪問している。

 痰(たん)の吸引や経管栄養など、医療的措置の必要な場合も、介護職員がこれらをできるようにすれば問題が解決するし、いずれにせよ緊急時などにそなえ看護師さんの随時訪問体制もしっかり整えなければならないから、それによって対応できる。褥瘡(じょくそう)の措置、インスリンの注射などは定時に、それも多くは日中に行えばすむ。

 そうなると、単身重介護の人で在宅介護が難しい人としては、認知症のせん妄(幻覚等)の症状があって夜間もひっきりなしにコールする人が残ってくる。しかし、これもある程度は医療措置などで解決できるという。軽度の認知症で徘徊(はいかい)癖のある人にも、一人自宅で暮らす方策は考案できそうである。

 結構、希望が持てそうになってきている。


ほった つとむ氏 1934年宮津市生まれ。京都大法学部卒業。東京地検特捜部検事、最高検検事などを経て、91年に法務大臣官房長を最後に退職。現在、ボランティア活動の普及に取り組む。弁護士。著書に「おごるな上司!」「心の復活」「少年魂」など。