京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
|
●コラム「暖流」
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。 バスケに挑む
去年の暮れ、母校のバスケットボール部の後輩から連絡を受けた。内容はOBチームの存続が危ういというものだった。聞けば先輩たちがシニアの部に移行するためメンバー不足で成り立たないというのである。
「直美先輩、お願いします」わたしはどうもこの先輩という言葉に弱いらしい。今現在わたしの仕事を含む時間のやりくりは、売れっ子アイドルを超えるのではないかというくらい過密で、分単位で次から次からよくもこれだけやることが湧いてでてくるなと思うほどである。とはいえ売れっ子アイドルではないので、もうかってまっかの問いには「ぼちぼちでんな」という余裕すらかますことができない。「いや、ほんと危ないです」と自社の経理をまともに見れば言わざるを得ない状況だ。 でも、いや、しかし、だ。わたしにとってバスケは映画を創る前にわたしのすべてをつかさどり形作っていたと言っても過言ではない代物。ましてや共にプレーをした後輩からのお願いとあっては、断るわけにはいかない。ということで今年早々に、「今年はバスケを真剣にやります」と事務所のスタッフに宣言。初練習にも張り切って参加した。 後輩はとにかく「勝ちたい」という。なぜなら今年ママさんバスケの近畿大会が奈良で開催されるのだ。つまり近畿大会に出場するためには、県で2位までに入らなければならず、現在の実力では3位に入るか入らないかというぐらいで、もし負けてしまったら、大会当日試合には出場できず、準備や片づけだけ手伝いに来なければならないらしい。体育会系の血がそれを聞いて燃え出した。「やるからには、勝つ」あの高校時代の気持ちが沸々と湧いてくる。予選が春にあるらしいので、それまでの冬の間、いかに基礎体力をつけて、チームプレー、つまりはフォーメーションを完成することができるか…。目指せ近畿大会出場。 しかし、わたしは映画作家。この両輪は成立するのか、悩ましい新年の幕開けである。 かわせ なおみ氏 1969年奈良市生まれ。97年「萌の朱雀」がカンヌ国際映画祭新人監督賞、2007年「殯の森」がグランプリを受賞。2010年より開催の「なら国際映画祭」エグゼクティブディレクター。
▲TOP
|