ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

地域に根ざした生活支援

同志社大教授 上野谷 加代子


 地域社会には様々な生活困難を抱えている人々がいる。  経済格差・貧困、孤立・子育ての大変さ、3万人を超える自死、買い物難民・介護難民などと呼ばれる状態を放置しておいて、安心して人間らしい暮らしが継続する社会になるのだろうか。家族や地域の問題解決力の喪失は日々深刻な状況である。経済的支援を基盤においた根源的解決へ向けた取り組みは重要だ。しかし、日々の生活を支援することの大切さを忘れてはならない。あいさつ運動や地域社会の助け合いにとどまらず、さりとて公的(行政)サービスの補完ではなく、人と人とのつながりを尊重し、生活に寄り添い、個別ニーズに即した柔軟なサービスを仕組みとして生みだすことが重要である。これを「生活支援」サービスと呼んでおこう。

 生活支援サービスは、
1)市民の主体性にもとづき運営されるもので、
2)地域の要援助者の個別の生活ニーズに応える仕組みをもち、
3)公的サービスに比べ柔軟な基準・方法で運用されるが、
4)個別支援を安定的・継続的に行うためよりシステム化
されたものである。

 近隣の自然な助け合い・支え合いも様々な形がある。ふれあい生き生きサロンや種々の小地域ネットワーク活動は、社会福祉協議会等の地域福祉活動として蓄積がある。見守り・支援活動として各地で定着しつつある。さらに意図的に計画的に支援の安定化に向けた取り組みもなされている。たとえば住民参加型在宅福祉サービスや食事サービス、移動サービスなどである。農業協同組合や生活協同組合、さわやか福祉財団、NPO法人などの助け合い活動、福祉活動はここに位置づくことが多い。まさに生活支援である。公的サービスとしての福祉・保健・医療サービスがなければ、セーフティネットは機能しない。しかし、地域に根ざした多様な団体の協働による生活支援がなければ安心で豊かな暮らしを継続することはできない。公私協働の真価が問われる時代である。


うえのや かよこ氏 
同志社大学大学院社会学研究科教授。
1949年生まれ。大阪市立大学大学院修士課程社会福祉学専攻修了。研究テーマは地域福祉方法論。日本福祉教育・ボランティア学習学会会長、日本地域福祉学会副会長。