ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

家族会議のすすめ

まちの学び舎ハルハウス代表
丹羽 國子



 多くの親は「子には苦労をさせたくない」と共働きで財政を切り詰め、子の「大学卒」をめざして教育費を蓄え、多くの子も大学が目標のように進学する。しかし日本の労働界は、100人中87人が雇用労働者、その3分の1が非正規雇用労働である。大学生が企業を選ぶのではなく、企業が人を選ぶ時代になっている。ことに医療・福祉関係の場合、就業する人に国家資格と運転免許のようにダブルライセンス保持を求め、ライセンスで賃金差を設けている。そのため、大学卒業後、資格を求めて専門学校へ行く人が増加している現状である。

 人間の成長発達に欠かせない「将来、自分は何で、どのように生活設計を立てて、健康に生きて暮らし、人生を全うするか」の自分探しの旅は、高校や大学へ入学後では遅きに失し、引きこもりやフリーターに陥りやすい。

 日本に住むには、生涯に3度の大災害(地震・風水害・火災・原発事故等)に遭うことを覚悟して、幼児期から体験的に生きていく生活の知恵の習得が必須であろう。親の給料が現金支給のころは、月給日の夕食後、家族全員で食卓を囲み、乳児を抱いた母が諸経費(住宅費・食費・日用品費・被服費・教育費・各人の小遣い・慶弔費・貯金等)袋を並べ、父が月給袋から現金を出して、話し合いで1カ月の生活費を決め、だれもが家族の役割を果たして動き、働いていた。

 今日の家族は、家庭が生活協働体として「入(いる)を量って、出(いずる)を制す」を意識し、家族全員の健康保持と子が乳幼児期から成長発達に不可欠な自律(autonomy)と生活機能の自立(independence)を図ることや親の老後資金確保に、週1回または月1回の家族会議をお勧めする。

 家族会議は、一人一人健康状態、毎月の収入と支出(諸経費を分類して)のバランスと節約方法、家事家政の分担を話し合い、一人一人が実行する。同時に、社会がどのような仕組みになっているのか。家族全員が共通の認識をもって健やかに生きていく知恵を高める時代である。


にわ・くにこ氏 
看護師、ケアマネジャーを経て2009年まで佛教大教授(社会福祉方法論)名古屋市出身。72歳。