ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

太陽を浴びて歩こう!

まちの学び舎ハルハウス代表
丹羽 國子



 ひきこもり人よ! 一刻も早く、戸外へ出て、太陽を浴びて深呼吸をしよう!

 ついで朝起きて、梅干し1個を入れた水か果物ジュースをコップ1杯飲み、樹木の多い公園や神社仏閣や川の畔(ほとり)まで歩いてみよう。自転車で往復しても良い。昼夜逆転し、室内に日中もうろう状態で過ごしていると、ルーの三原則の1つ「使わなければ退化する」のが人間の躰(からだ)である。

 歩き始めると、だれかに見られている後ろめたさが先だって、何も見ず、真っすぐに帰って来た―という青年が多い。毎日歩いて、爽やかさを味わうと「明日も出かけて見よう」へ変化する。1〜2週間、歩き続けて青空を見上げると新聞を読もうという気(長いひきこもり人は、活字が読めない。TVもウザイ!)が起きてくる。

 1カ月もすると、五感が動き出し、皮膚から汗が出て、空腹感が生じてくる。いつの間にか、夜になると眠くなり、これまでの自分を振り返る事やこれからどうしようと新たな悩みが生まれ、新たな人生が動き始める。

 「治す主人公はあなた」であり、カウンセラーや精神科医は、治療対象者のあなたのお手伝いをする専門家にすぎない。

 実例に、親が退職金を使い果たすまで、親と通院を繰り返していたが、親子とも加齢しただけの家族がいた。

 その意味で、ひきこもりの月日が長い人ほど、日中の歩く時間を長くして躰を作ることをしないと、行動の変容には至らない。

 毎日、歩いて躰を作り、ハローワークへ行って見よう。加えて、日々変化し続けている社会と折り合うには、社会体験(朝起きて、ご飯を食べ、就業時間前に会社へ行き、タイムカードを押す訓練等)は必須だ。自分で考える事と実際の社会は、腹立たしいほど違っている。健康な生き方は、一人ひとりの思いと住む環境や家族関係によっても異なる。

 今からでも遅くはない。信頼のおける人生の先輩にアドバイスを受けながら、明朝から思い切って、太陽を浴びて歩いて見よう!


にわ・くにこ氏 
看護師、ケアマネジャーを経て2009年まで佛教大教授(社会福祉方法論)名古屋市出身。72歳。