ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

92歳のかかりつけ医

まちの学び舎ハルハウス代表
丹羽 國子



 一人一人の人生に、もっとも大切な健康の管理者であり、人生の伴走者である“かかりつけ医”2人をお持ちですか? “2人って?” 内科医or家庭医と歯科医である。

 私の場合、自宅から5分ほどの医院にかかりつけ内科医が居る。数年に一度の受診にも関わらず、必ず訴えをじっくり聴いて質問し、躰(からだ)全体の聴診と触診をする。救急患者の場合、待合室の人に声をかけて協力を願い、直ちに診察。必要時は病院受診への救急車!と連携も早い。かかりつけ医の妻(看護師)が、一人一人の理解度に応じて親切・丁寧に薬の説明や日常の健康管理を指導して下さり、いつも安心である。

 上京した20歳から、かかりつけ歯科医に年2回の健診で歯石除去や歯の磨き方等の指導を受けていた。30歳で帰郷時、かかりつけ歯科医が同級生への紹介状を下さり受診。年2回「健診のお知らせ」(ハガキ)が来ると受診する。

 今日も妻(89歳)が受付・会計担当で親切・丁寧。歯石除去と早い治療のおかげで、かかりつけ歯科医(92歳)は「8020(80歳で20本の自歯がある)まで行けるよ」とにっこり。2回の受診料は910円であった。

 今年7月に厚生労働省は、がん・心筋梗塞・脳卒中・糖尿病に精神疾患を加えて5大疾病とした。しかし5大疾病は、すべて慢性疾患であり、長年(時には3代にわたる)の暮らし方から生じてきた生活習慣病の結果である。

 “予防に勝る治療なし”のことわざ通り、WHOの健康憲章と医師法第一条の目的に基づいて、住民一人一人に“かかりつけ医”制を設け、定期健診の実行と健康指導は不可欠である。そうすれば、事後福祉の典型である乳幼児から高齢者にいたる虐待やいじめが発見でき、自殺予防にもつながるのではないであろうか。

 政府は財政困難で増税をうたう前に、生まれた時から“かかりつけ医”2人を持つ“プライマリーヘルスケア”に、一日も早く変革する医療システムの改革に取り組んで頂きたい。財政逼迫(ひっぱく)日本を救う近々の最重要課題である。


にわ・くにこ氏 
看護師、ケアマネジャーを経て2009年まで佛教大教授(社会福祉方法論)名古屋市出身。72歳。