ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

夜明けのボランティア

まちの学び舎ハルハウス代表
丹羽 國子



 東日本大震災から10カ月。新たな日本創生に、住民一人ひとりの賢明で健やかな暮らし方と身近な他人との絆が求められている。

 清少納言が “春は曙(あけぼの)ようよう白くなりゆく山際” とうたった比叡山を見はるかして、住民が三々五々集い、あいさつを交わしながら行う船岡山のラジオ体操は爽快!

 京都住民の朝は早い。住民は古い伝統行事やボランティア諸活動を、時代に合わせて微妙に変えながら守り続けている。

 典型例は、各町内でご近所の子の成長を見守り育む地蔵盆と夕方から始まる大人の宴である。まちの学び舎ハルハウスに老若男女が集うなか、町内会長があいさつ。新たな町民の紹介やお一人暮らしの見守りとお互いの協働を呼びかけて “救急時は119・災害時は171へダイヤル!” と “お地蔵さんの前に集まろう” ワッペンを各家の電話器の上に貼りましょう?と配布する。そして乾杯! 参加者は順に自己紹介をしながら、食べ、飲み、笑い、にぎやかに語り合う。

 わけても、住民が実直・勤勉に実行しているボランティアは、家の周りの道路清掃である。

 12月の千本通りのイチョウ並木は黄葉(こうよう)が見事である。しかし雨が降る時の落ち葉は、片まひや足の不自由な人には、滑りやすく恐怖である。

 落ち葉が積もったままの道路前は、個人情報保護と称して名乗らず、不動産会社にマンション経営を任せているワンルームマンションである。それ以外は、どの道路を見ても清掃が行き届いてすがすがしい。

 筋向いの老夫婦は、夏は午前4時、冬は5時過ぎから、家の周りから隣の小学校の周りや船岡山の石垣下の道路まで、しっかりと掃き清めて下さる。佛教大学陸上部の監督と選手は、午前6時30分頃から、大学周辺バス停のタバコの吸い殻やゴミを拾って美化に務め、商店街の店主や企業職員は、通勤者が往来する前に掃いている。

 国際観光都市京都の道路美化は、住民の夜明けのボランティアで支え、守り続けられているのである。




にわ・くにこ氏 
看護師、ケアマネジャーを経て2009年まで佛教大教授(社会福祉方法論)名古屋市出身。72歳。