ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

生活保護者の健康

まちの学び舎ハルハウス代表
丹羽 國子



 多くの人は、限りある収入のなかで日常生活の必要経費を意識的または無意識に優先度を考え、とりわけ、年金収入のみの高齢者は、節約しながら固定資産税等を蓄え暮らしている。

 収入の低い人が、酒・たばこ・ファッションと娯楽を優先すれば、控えるのは食費であり、身近に関わる生活保護者の健康状態に危惧を感じている。

 例えば、夫婦(40代)と子ども3人の生活保護者は、住宅扶助で3DKの市営住宅に住み、医療扶助でほぼ毎日、一家の誰かがクリニックか病院へ通院受診する。朝はパンと牛乳、昼は病院の食堂で一番安い値段の食事、夜はカップラーメン等の買い食い食生活である。夫婦は好きなたばことパチンコ、親子そろいの洋服にお金を使う。そのため、子たちは平均年齢の発育に達せず、学校は休みがちである。

 30代のうつ病男性はアパート暮し。タバコは1日2箱、晩酌は缶ビール。いつもせきをして顔色が悪い。寝るのは午前2〜3時前後。精神科への受診日以外は10時まで寝て、そのままデイケアに行く。

 厚生労働省は生活保護者の増加と受給期間の長期化に就労準備訓練支援等の対策を始めている。しかし、その対応は、労働と保健・医療と福祉部門が縦割り行政窓口であり、加えて医療関係者は福祉に弱く、福祉関係者は医療に弱い。

 そのため、就労に必須で脳科学者が勧める早寝・早起き・朝ご飯の生活習慣を獲得して働くための躰(からだ)つくりを支援する健康福祉はなおざりである。

 諸外国の公的扶助制度に見る食費の多くは現物給付であり、成長期の子には高い食費を支給している。英国では総合病院の一角に生活訓練施設があり、生体リズムに合致した生活リズムのできる自炊を指導して生活習慣病の行動変容を促して労働に結び付けている。各地域に労働・保健・医療・福祉を統合した健康福祉ステーション創設と具体的な健康指導対応が不可欠ではないであろうか。

にわ・くにこ氏 
看護師、ケアマネジャーを経て2009年まで佛教大教授(社会福祉方法論)名古屋市出身。72歳。