ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

障がいって?

まちの学び舎ハルハウス代表
丹羽 國子



 ロンドン・パラリンピックのTV観戦は、あらためて「障がいって?」を日本人一人ひとりに深く問いかけてきた。

 そして障がいをもつ当事者や家族に対し、病院・施設・学校職員やボランティア団体などは、2001年のWHO総会が承認した国際生活機能分類(ICF)を深く学び、個別的な日常生活支援へと大転換する時、と実感する。

 小児専門病院勤務時(1990年代)、人間は両手足を使って前頭葉を発達させてきた二足直立歩行動物のため、流産や障害を持つ子の生まれる可能性が高いことと、病院が一丸となって「障害を残さない医療」を目指し、その子たちにハビリテーション(=人間の衣をまとうの意)をすることが一番大切であることを教えられた。

 ICFは、人間の福祉の全体性を、健康領域と他の領域(教育・雇用・環境・その他)に分けて約1500項目に分類し、世界共通用語と実用的なシステムの測定用具を提供している。また個人の固有の価値と自律性(自己決定)を尊重し、あくまで本人の視点からの評価を重視している。

 機会あるごとに、高校生や大学生に「障がいをもっている人?」と質問すると、「ない」とほぼ全員が答える。

 しかしICFが「親や社会的支援を受けて高等教育を続けている青少年は、自律(autonomy)と生活機能の自立(independence)に困難または障がいを持つ人である」と評価していることを説明すると、驚きながら理解する。

 今日の通所施設や学校の運営は、専門職員を中心としたプログラムで集団的・画一的であり、障がいを固定化し、保護しているように見える。

 医療・福祉・教育関係者は「障がいを持つ個人が、何を獲得すれば社会で生きて行くことが可能か」を考えて、ICFに基づくハビリテーションを重視した諸支援へと大転換してくれるよう期待する。

にわ・くにこ氏 
看護師、ケアマネジャーを経て2009年まで佛教大教授(社会福祉方法論)名古屋市出身。72歳。