京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●コラム「暖流」
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。 自殺者減少、だが若者は
昨年の自殺者の数が、15年ぶりに3万人を下回ったという。自らの命を絶つという痛ましい出来事が一人でも減ったことは、大変喜ばしい。自殺は、家族や友人ら周囲の人々にも癒やしがたい苦しみを残す。
バブル崩壊直後の90年代末からの自殺者数の急激な増加は、特に50代以上の男性に顕著であった。経済の悪化が、自殺を誘発したことは明らかである。だから、自殺の減少はこれまでの種々の対策の効果と経済の好転の兆しであり、希望の持てる話に思える。 しかし、だ。ちょっと待ってほしい。ほんとうに私たちのまわりには、明るさが見えてきたのだろうか。 自殺の減少は県別にも差がある。多くの人達が自殺を防ぐ活動に真剣に携わっているが、減少のなかった地域は努力が足りないのか? 減少した地域は、これからも同じ対策を強化していけばよいのか? 実は「自殺者数の減少」は、「自殺が減った」ことを意味していない。どういうことか。自殺の好発集団は、いつの時代でも50〜60代という年齢集団である。日本では突出して大きな年齢集団である団塊世代が50代に入ったのが世紀末、そして今60代を抜けつつある。つまり、各年代の「自殺率」は減らなくても、団塊世代が自殺好発年齢を通り過ぎるだけで、「自殺者数」は減るのである。 身もふたもない話だろうか? 違う。厳しい目で数字を見れば、別の本当の危機が見えてくる。変わらない現実社会の冷たさに、次の世代がさらされつつあるのだ。この数年、若者の自殺が男女ともにじわじわと増えている。しかし、若年人口が少ないので「年代別自殺率」は増加しても、数としては目立たない。 だから、喜ぶのは早いのだ。この危機感のほうが、私たちの実感だろう。生活保護の切り下げは、次は社会保障全般の縮小につながる。自己責任ばかりを求める時代は、若者と、そして再び、高齢化した団塊世代を自殺へと追いつめる…ことにならぬよう願う。 たかぎ・しゅんすけ氏 2つの病院で約20年勤務後、2004年、京都市中京区にACT-Kを設立。広島県生まれ、54歳。
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