京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●コラム「暖流」
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。 きつい言葉を発した後に真宗大谷派僧侶
川村 妙慶
今、「イライラ」している人が多くなった気がします。先日も介護施設で働く30代の方が、「気持ちよく介護の仕事をさせていただこうと思っても、どうしても優しくできないのです」と正直な胸の内を伝えてくださいました。
「誰とでも優しく接したい」という願望はあったのでしょう。何かのきっかけで優しい気持ちにはなれなくなってしまう。なぜなのでしょうか。人間というのはきつい言葉を発したり、その人のためと思った言葉が相手を傷つけることがあるのです。 ある女性は「あなた姿勢の悪い人ね」と言われ、一日が暗い気持ちになったそうです。善意な気持ちからかもしれません。しかし、受け止める人間にとって、すべてを受け入れる余裕のない時もあります。指摘や嫌みの言葉として聞こえてくることもあるのです。 私たち人間は、言葉という素晴らしい文化をもっています。しかし、言葉は使い方を間違うと、凶器にもなるのです。何気なく発した言葉が誰かを傷つける場合があります。 仏教に言辞施(ごんじせ)という施しがあります。心を通わせる思いやりの言葉を投げかけようという仏さまのメッセージなのです。 人生を振り返ってみて、今でも覚えているうれしかったことは何でしょうか?「あの時、あの人からあんな温かいことを言ってもらった」ということではないでしょうか。 「いつもありがとう」「つらかったね」「よく頑張ってるね」。相手の気持ちに寄り添う、慈愛の言葉をいただいたとき、私たちは何十倍も生きる希望をいただけるのです。 ひとつの言葉でけんかして ひとつの言葉で仲直り ひとつの言葉でおじぎして ひとつの言葉で泣かされた ひとつの言葉はそれぞれに ひとつの心をもっている (作者不明) きつい言葉を発してしまった後に「さっきはごめんね」と一言添えませんか? かわむら みょうけい氏 アナウンサー、正念寺(上京区)坊守。メールで悩み相談受け付け。北九州市出身。46歳。
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