ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

福島の子どもらのために

ACT―K主宰・精神科医 高木俊介


 「父は津波で亡くなった。老いた祖父母の面倒をみなければならないので、ここに留(とど)まっています」。福島第1原発の北、南相馬市の障がい者施設で働く若い女性が言った。今も放射線量は高く、除染は進まない。不安を抱えながらも、避難しない、できない理由はそれぞれである。

 子どもらの健康被害に対する不安は、さらに深刻だ。子どもは放射能の危険にさらされやすい身体である。すでに福島では、10人以上の子どもに甲状腺癌(がん)が見つかったが、放射能の影響については、政治的理由からか意見が分かれたままだ。

 危険にばかり目を向けると、そのストレスがさらに健康を蝕(むしば)む。安全だと思い込めば、さらなる危険にさらされ続けることになる。行政は安全だと言いながらも、子どもの外遊びを制限している。内部被曝(ひばく)を避けるために、親たちは毎日の食事に神経をすり減らす。

 そんな中でも、精神障がい者や高齢者は、住み慣れた場所から離れにくい。彼らの世話に残る医療・福祉関係者には、若者、女性、子育て世代が多い。その子どもらが、夏のひととき、放射能を気にせずのびのび過ごせる保養が必要だ。

 福島の福祉関係者の子どもらを、八丈島で保養してもらう活動「福八子どもキャンププロジェクト」(HP「福八子ども」で検索)を昨年から行っている。第1回は、島を挙げての協力で大成功であった。一週間でも、子どもらは見違えるほど生き生きし、成長する。

 子どもらは、今年も八丈島を楽しみに1年を過ごした。7月末から8月前半、子どもら約30人が、2班に分かれて八丈島にやってくる。島の迎え入れ準備や活動計画も、万端だ。

 子どもらの健康を見守るために、毎夏続けたいが、被災者の生活は苦しく、活動費援助が必要だ。紙面を借りて協力を呼びかける。

郵便振替<00120─8─418497 Fuku Hachi Child Net>

 ホームページでは、島で遊ぶ子どもらの笑顔に会えます。ぜひ、よろしく。


たかぎ・しゅんすけ氏
2つの病院で約20年勤務後、2004年、京都市中京区にACT-Kを設立。広島県生まれ、54歳。