ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

自宅で大往生



 「ピンピンコロリで死ねる人は4%。人は、年を取れば次第に半壊、そのうち全壊になって死んでいくのです。自分には何か特別なことが起き、ずっと元気でいられるなどと期待するのはよくない」

 発言者が、在宅での看取(みと)り率70%以上の専門医だから、会場もシーンと聴き入っている。

 7月28日、さわやか福祉財団が仙台で開いたフォーラムには、私たちが復興支援に入っている七つの市や町の在宅医療のお医者さんに登壇して頂き、地域包括ケアの町に復興する方法と課題を語ってもらった。

 いま国は、全国で地域包括ケアによって在宅での医療・介護を充実しようと働きかけている。全体の傾向としては、患者や利用者の立場に立つ市民や介護事業者がこれに賛同してその実現拡大に動き、看護師もその方向だが、医師はやや腰が重い状況である。しかし、東北の被災地では、これまで介護は施設重視の傾向が強かったため、介護事業者の腰が比較的重く、その中で、在宅医療をやって来られた少数派のお医者さんが、積極的に地域包括ケアの導入を唱えておられるという特徴がある。

 そこで、そういう第一線のお医者さんたちに集まってもらい、思うところを語ってもらったのである。

 病院の医師との連携や、看護師の活用、人材の育成、医療行政の充実など、具体的な課題が語られ、会場は「勉強になった」「目が覚めた」など、拍手の連続であったが、七人の医師に共通していたのは、「医療だけでは在宅診療はやれない。患者が自宅でその人らしく暮らせるよう、地域のいろいろな支えが必要」ということであった。

 その流れの中で、患者自身の心構えも説かれたのである。はじめに紹介した発言に続いて、別の医師が

 「自宅で死ぬ時、その場に医者がいなくてもいいじゃないですか。家族や仲間に囲まれ安らかに大往生すれば本望でしょ」と発言。

 会場の多くの方がうなずいておられた。