ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

ケアメン・サミット

立命館大教授 津止正敏



 本稿が読者諸兄姉の目に留まるちょうどこの日に「ケアメン・サミットJAPAN」と銘打ったイベントが京都で開催される。私が事務局長を務める男性介護ネットの主催だ。各地に広がる男性介護者の会や集いの関係者が主な対象だが、この間の新聞記事やインターネットなどで調べてみるだけでもその数ざっと100を超えている。つい最近まで、グループ数は50をくだらない、などと言っていたことからすればアッという間にもう倍増だ。

 このイベントのキャッチコピーは次の五つ。

 「かたろう!男の介護。つたえよう!私の介護体験。ひろげよう!介護の仲間と集い。かえよう!介護保険と介護休業。なくそう!介護退職と介護事件」

 このイベントの趣旨は二つある。一つには100万人を超える男性介護者のコミュニティーを身近な地域に作っていこうということ。そして二つには最近特に社会化している介護と仕事の両立支援のムーブメントを起こそうということ、だ。とりわけ後者は、政府文書(就業構造基本調査)が明らかにした介護している者の半数以上が働きながら介護しているという状況からすれば待ったなしの政策課題ということだ。「介護退職ゼロ」を可能とする雇用環境と、孤立しがちな介護する人・される人を支える包括的な介護支援制度の実現が私たちの願いを叶(かな)える鍵となる。家族の中に誰一人不幸な介護事件の被害者も加害者も作らない社会環境づくりのための必須の条件でもある。

 11月11日は「介護の日」。「いい日いい日」と厚労省が2008年に制定した。関係者以外にはあまり知られていないが、それでもこの日の前後には行政や市民の関連イベントが盛んに催されるようになった。おざなりな企画もあるが、介護の社会化を強く意識した意義あるものも多い。介護が私たちの暮らしと社会の成熟度合いを測る尺度になる、そんな契機にこの日がなればと思う。「ケアメン・サミット」もその一翼を担いたい。


つどめ・まさとし氏
1953年、鹿児島県生まれ。立命館大学教授。大学院社会学研究科修士課程修了。
京都市社会福祉協議会(地域福祉部長、ボランティア情報センター長)を経て、2001年から現職(立命館大産業社会学部教授)。2009年3月に「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」を発足させ、事務局長を務める。著書に『ケアメンを生きる−男性介護者100万人へのエール−』『男性介護者白書―家族介護者支援への提言−』、『ボランティアの臨床社会学―あいまいさに潜む「未来」−』、『子育てサークル共同のチカラ−当事者性と地域福祉の視点から−』など。