ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

冬は、チューニングする時期

真宗大谷派僧侶
川村 妙慶



 ある時先輩から、「冬は、勉強の時期でもあるのよ」と教えていただきました。私にとっては、勉強というと「部屋にこもって学習する」というイメージでしかありませんでした。

 昨年末、目まぐるしい忙しさが続き、体調を崩してしまいました。しかも大切にしていたものを失くしてしまい最悪でした。その時ふと考えたのが、「失敗から学ぶ時期が冬なのかな?」ということです。

 私のストレス解消は、月に数回のマッサージとクラシックコンサートに出かけることです。仕事を終えて、身も心もまかせられる空間っていいですね。

 さて、「終わった!」という解放感を満喫しながら、ふと考えたのは「なぜ終わるという字は、『糸』に『冬』と書くのかな?」ということでした。調べてみると、冬という字は、貯蔵用の食物をつり下げたままを描いた象形文字で、食物を保存、貯蔵するという意味があるそうです。

 では、糸が付いてなぜ「終」と読むのでしょうか? 実は、糸というのは重要な役目があるのです。例えば、ギターやバイオリンなどの弦楽器の先に、ペグという糸巻があります。これは、弦を楽器に固定して張力を保つ役目を持つそうです。また駒と反対側に備えられ、弦を巻き取りながら調律するチューナーの役目もあります。

 弦楽器は、弦を張りすぎると「キンキン」の高く聞きづらい音になります。反対に緩めすぎると、鈍感な音になってしまいます。

 冬に糸。終わりというのは、すべてにおいてお終(しま)いということではなく、冬の時期に1年間のしめくくりとして、自分の身と心を張っている糸のチューニングをしていく時期なのかなとも思いました。

 免疫も低下する時期、栄養をつけて体に蓄え、心を引き締めましょうということなのです。「まだまだいける!」と自分の年齢を振り返ることなく思い上がった私でしたが、「失敗と病気」をすることによって学ぶことができました。


かわむら みょうけい氏
アナウンサー、正念寺(上京区)坊守。メールで悩み相談受け付け。北九州市出身。46歳。