ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

義務感と満足感



 「あたたかい助け合いのある地域をつくろうと思えば、行政は住民の活動をしばってはいけません。自由選択がキーワードです」

 長年にわたり神奈川県平塚市で町内福祉村の地域活動を支援してきた職員、木村知広さんは語る。

 町内福祉村は、町内の人々が居場所に集って話し合う中から「じゃ、これをやろう」といって始める活動を展開する地縁組織で、平塚の半分以上の地区に生まれている。活動はさまざまで、外出の付き添い、買い物やゴミ出しなどの手伝い、子育て交流、料理教室、共同農園、災害訓練など、町内の方々が「私たちでやってみよう」というものが行われている。

 私も十年以上昔、福祉村の立ち上げに参加した。夜に集まった地域の方々に「まず困っていることを書き出し、それぞれについて、行政に対応するよう要請するのか、自分たちで解決するのかを話し合って決めましょう」と呼びかけた。結果は、私が想像した以上に「我々(われわれ)で解決する」という事項が多く、「平塚市の方々はずいぶん自立して、助け合うお気持ちも強い」と感服したことを鮮明に覚えている。

 大分県臼杵市も、意欲的な協働まちづくり推進局長の西岡隆さんが、地域振興協議会の設置を後押ししている。「地域の色んな人に出番があって持ち味発揮」をうたい文句に、半分以上の小学校区に協議会が生まれ、福祉や健康、子育て、防災から伝統芸能、フリーマーケットまで、地域ごとに多彩な活動が展開されている。

 名古屋市の地域福祉推進協議会は、NPOなどと協議して「シルバーパワーを活用した地域力再生事業」を展開しており、高齢者が、修繕、病院送迎、財産管理や亡くなった高齢者の家財整理など、幅広い能力を社会に役立てている。

 あちこちで動き出している自主的な地域活動は、木村さんの言葉を借りれば「やらされ感でなくやりがい感が、義務感でなく満足感がある」ところが魅力なのであろう。


ほった つとむ氏 1934年宮津市生まれ。京都大法学部卒業。東京地検特捜部検事、最高検検事などを経て、91年に法務大臣官房長を最後に退職。現在、ボランティア活動の普及に取り組む。弁護士。著書に「おごるな上司!」「心の復活」「少年魂」など。