ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

福祉団地



 「私たちの団地から孤立死や餓死する人が出てよいのか」。その思いが真地団地の自治会長眞榮城(まえき)嘉政(よしまさ)さん(65才) を狩り立てた。

 真地は、マージと読む。那覇市にある12棟、計400室の団地である。

 「自治会活動の質的転換が必要だ。従来の単発行事型を365日通年型の活動にしよう。それには、自治会福祉という考え方を導入して、会員の意識を変えることが必要だ」

 アイデアマンの眞榮城さんがやったことは多い。

 不活発だった団地の高齢者組織で、市の事業「地域ふれあいデイサービス」を受託、週1回のサービスのうち、月2回分は、自主運営にした。もう16年も続き、団地の高齢者のいきがいとなっている。

 市の社会福祉協議会の事業を導入して、百金食堂を開いた。毎金曜日、100円均一の食事会。メニューを見るとこれが結構豪華で、ちらしずしにあさりのみそ汁。ウインナー、ゆで卵、しそ昆布、梅干し、みかん。毎回5、60名が参加し、この会から、助け合いが生まれ、さらに食事に加わるNPOなど他の団体との連携も生れているそうな。

 子育て支援も怠りない。市の子育て支援センターの出前講座を引っ張ってきた。

 絆が深まり、ついに団地に地域福祉部が誕生する。目標は「日本一の福祉団地」。「まだまだですがね」と眞榮城さんは謙虚だが、「真地団地自治会福祉五ケ年計画」などを作って意気込みはすごい。

 5階までの階段すべてに手すりをつけ、集会所のトイレを洋式にし、血圧計、ルームランナー、健康バイク、車椅子5台から8名乗りの車まで、購入。国から助成財団までの事業に目ざとく手を挙げ、資金をものにする。車には出不精の高齢者を乗せて、青春時代思い出の地巡りを楽しむのだとか。

 若々しいから認知症のおばあちゃんから「一緒になって郷里に帰ろう」とせまられたりしている。

 日本中の団地に、こんな自治会長さんが欲しい。


ほった つとむ氏 1934年宮津市生まれ。京都大法学部卒業。東京地検特捜部検事、最高検検事などを経て、91年に法務大臣官房長を最後に退職。現在、ボランティア活動の普及に取り組む。弁護士。著書に「おごるな上司!」「心の復活」「少年魂」など。