ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

口答えは健康的

真宗大谷派僧侶
川村 妙慶



 「あいつは目上に向かって口答えをする」「この子は親にはむかう」と、口答えする人にイライラすることがありますね。しかし、口答えは健康的な証拠なのですよ?

 今、事件を起こしてしまった人の中には「おとなしそうで良い子がなぜ犯罪を?」という声を耳にします。その人との信頼関係がもてないために、今の気持ちを返す気にはなれない。すると自然と口を閉ざし、その時だけの良い関係を作ろうとするのです。しかし、人間は「言いたいことも言えなかった」というストレスを抱えますから、他の場所で発散させてしまうのです。実は、適度に返すというのはコミュニケーションの一貫なのです。

 さて、人間はなぜ口答えをするのでしょうか。そこには「やられたら、やり返す」という戦う気持ちが備わっています。やられっ放しでは負けた気持ちになるのです。相手も同じ気持ちですから、争いが起きるのは納得ですね。ではどうしたらいいのでしょうか?簡単です。同じ方法で正面からぶつかることをやめたらいいのです。

 人間関係をよくするコツは、勝とうと思わないことです。ではやられて損をしたらいいのか?とお叱りを受けそうですね。理不尽な理由で、あなたが追い込まれたりした時は工夫をしたらいいのでしょう。その時は、一度、素直に聞きましょう。きちんと前を向き、しっかり怒っている理由をきちんと理解することです。そして、その後、怒られながら、「以後、気をつけます」と伝えたらいいのです。

 そして相手が落ち着いた後に「さきほどのことで、どうしてもわかってもらいたいことがあるのです」と事情を伝えたらいいのです。あなたなりに仕事に熱心に取り組もうとしていることをわかってもらいましょう。口答えは、情熱のある証拠。しかし、相手も情熱で叱ってくるので、相手の状況を観察しながら、あなたの気持ちを柔らかく伝えていきましょう。


かわむら みょうけい氏
アナウンサー、正念寺(上京区)坊守。メールで悩み相談受け付け。北九州市出身。46歳。