京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●コラム「暖流」
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。 あまのじゃくは良い人真宗大谷派僧侶 川村 妙慶
ある日、知人のお誕生日会をすることにしました。報告がてら「おかげでラジオ法話の番組が決まったのですよ」と伝えると、「どうせ3カ月で終わるんじゃないの?」という返事が返ってきました。
「このお菓子おいしいからぜひ食べて」と渡すと、「お酒の方が好きなのだけど」とひとこと。 人の心を見計らって、いたずらをしかける子鬼とされることから転じて、あえてこれに逆らうような言動をする“ ひねくれ者 ” を「あまのじゃく(な人)」と言いますね。 一般的には、気持ちの良い優しい言葉を返してくれる人は好かれます。しかし、わざと逆のことを言い、相手に不愉快を与える人はどういう心理なのでしょうか? 知人をよくみてみると、本当は素直になりたいのですが、素直になると「相手に同調した」=「負けた」ことになり、ついつい意地を張ってしまい、嫌みを言うことで自分のプライドを維持しているのです。 私たちは、褒めてくれる人を「良い人」、嫌みな言葉を返す人を「悪い人」と判断しがちです。 かつて師から「人間の心は二重底になっているのですよ」と教えていただいたことがあります。強がりを言う心の奥底には、「寂しいんだよ!」というもう一つの心の訴えがあるというのです。また、恥ずかしがりやで照れ屋でもあり、つい心にもないことを言ってしまうのです。 よく考えると、あまのじゃくって良い人なのだなと感じたのです。もし私が褒められ続けると、うぬぼれが強くなり、有頂天になるでしょう。また褒められることを当てにして生きることにもなるのです。そんな私にあまのじゃくは「天狗(てんぐ)」と、天から気合を入れてくれるのです。 先日、番組に向かう私に知人から「いつまでもあると思うな、人気と仕事」というメールをいただきました。私は思わず吹き出し、「あまのじゃく 嫌みで応援 ありがたし」と返事をしたものです。 かわむら みょうけい氏 アナウンサー、正念寺(上京区)坊守。メールで悩み相談受け付け。北九州市出身。46歳。
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