ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

つながるこころ

僧侶・歌手 柱本めぐみ




 「ありがとう、また来てや」と、嬉(うれ)しいことばをいただいて皆さまと笑顔で握手を交わすとき、80年、90年、中には100年の月日を生きてこられた方の手から、深いぬくもりをいただきます。またある時は、幼い子どもさんたちの無邪気な声に元気をもらっています。

 私は社会奉仕を目的とする団体のメンバーとして、介護施設や幼稚園などの施設を訪問する機会をいただいています。専門的な資格も知識もありませんので、お役に立てているかどうかは分かりませんが、皆さまと一緒に過ごす時間は、私たちにいただいた貴重な時間だと思っています。

 通所介護施設では、皆さまと季節の唱歌などの愛唱歌を歌います。歌の合間には懐かしい昔の話に花が咲き、笑い声も飛び交う和やかな雰囲気の中で、出会いのご縁のありがたさを分かち合うことができます。

 幼稚園では絵本を読んだり紙芝居をしたりします。園児さんたちは「これ読んで」と、小さな手に大きな絵本を抱えて持ってきて、一生懸命に耳を傾けてくれます。あまりに熱心に聞いてくれるので、私も童話の世界にのめり込んでしまいます。園児さんたちとの楽しいひとときに、育っていく大切な命がたくさんあることを、あらためて思わせていただいています。

 このように施設を訪問するようになり、ことばを交わし、こころのつながるご縁のよろこびがあることに気づかせていただきました。そして、時間に追われる日常の中で、私たちはお互いの顔をちゃんと見て会話することを忘れがちになってはいないかと考えるようにもなりました。情報を伝えるには、メールやSNSなどは確かに便利なシステムですが、最近はそれらによって人とつながっているような錯覚に陥りがちであることが懸念されます。

 人が本当につながるということは、同じ時を過ごし、語り合ったり笑い合ったりすることではないでしょうか。日々の出会いや、顔を見てことばを交わすことを大切にしたいものです。



はしらもと・めぐみ氏
京都市生まれ。京都市立芸術大卒。歌手名、藤田めぐみ。クラシックからジャズ、シャンソン、ラテンなど、幅広いジャンルでのライブ、ディナーショーなどのコンサートを展開。また、施設などを訪問して唱歌の心を伝える活動も続けている。同時に浄土真宗本願寺派の住職として寺の法務を執り行っている。