ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

受け継ぐこころ

僧侶・歌手 柱本めぐみ




 先日、義母の七回忌法要をつとめました。親族やご門徒さまのみならず、ご縁ある方がたくさんお参りくださいました。この6年間を振り返り、その間にいろいろとお世話になった方々にこころから感謝するとともに、義母にも感謝する1日となりました。

 義母とはずっと一緒に暮らしていましたので、本当の母娘のように過ごし、その中で、寺のことを何も知らなかった私に、寺の裏方としての役目やおつき合いのことなどを教えてくれました。そして私が住職になってからは私を見守ってくれていましたが、それと同時に、ご門徒さまや人とのご縁を大切にしていた人だったことに気付いたのが、この七回忌の法要でした。

 たくさんの人がお参りくださったのは、義母がご縁を築いたこと、そして、それが今も続いていることの証しだったのだと感じました。私は母のご縁を受け継がせていただいたのです。私はありがたい相続ができたことに感謝の気持ちでいっぱいになりました。

 「相続」とは家督相続、つまり跡目を継ぐという意味がありますが、多くの方は、「相続」と聞けば「遺産相続」、つまり故人の財産を受け継ぐことを思われるでしょう。確かに、法律的に「相続」と言えば、「人が死亡した場合に、その者と一定の親族関係にある者が財産上の権利・義務を承継すること」とあります。

 しかし、「相続」ということばは、もともとは「連続」という意味を持ち、この世の全てのことは姿形を変えて変転しながらも、絶えることなく存在し続けることを示す仏教用語です。そこから「亡くなった方の想いやご縁を、次の者が受け継いでいく」と解釈されています。ですから、私は義母が遺してくれた、皆さまとの貴重なご縁を相続させていただいたと言うことができます。

 人が生きていくためには、人とのつながりは本当に大切だと思います。それを見失ってはいないかと、自分を振り返る機会にもなった法要でした。



はしらもと・めぐみ氏
京都市生まれ。京都市立芸術大卒。歌手名、藤田めぐみ。クラシックからジャズ、シャンソン、ラテンなど、幅広いジャンルでのライブ、ディナーショーなどのコンサートを展開。また、施設などを訪問して唱歌の心を伝える活動も続けている。同時に浄土真宗本願寺派の住職として寺の法務を執り行っている。