ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

地域で取り組む福祉教育

関西大教授 所 めぐみ




 昨年からゼミの学生たちと和歌山県有田市の宮原地区に伺っている。地元の宮原小学校は、ふるさと教育、防災教育、福祉教育を、地域の力を借りながら丁寧に取り組んでおられる学校である。学生たちと私は、その一部分である地域の高齢者宅訪問に参加させていただいている。有田市社会福祉協議会、地域の自治会、民生委員さんらが学校とともに進めている取り組みだ。

 この6月にも、6年生が地域の高齢者宅を2回訪問し、その後親たちも参加する日曜日の授業参観では、2回の訪問を通じての学びの振り返りを行った。

 子どもたちは訪問先の近くに住んでいるのだが、必ずしも知り合いではない。つないでくださるのは自治会長さんや民生委員さんたちだ。同じお宅を2度訪問することで、顔なじみになることをめざしている。

 訪問当日はグループに分かれて準備してきた質問をもとにお話をする。1953年7月18日に起きた水害でこの地区では129人もの方が命を落とされ、そのうち20人は小学生だったという。60年以上たっているけれども、地域の方の記憶には鮮明に残っている。当時まだ3歳だったという方でも高台から見た光景や、自分の家や倉庫に避難されてきた人たちとの暮らしを覚えているという。災害、そしてその後をどう生きてこられたか、災害にどう備えておられるか。子どもたちは直接お話を聞き学ぶ。

 また今年は交流をより進めることをめざして、1回目の訪問で訪問先の方が何に困っているか何に興味があるのかなどを聞いて、2回目の訪問で行動に移した。お手伝いをしたり、外に一緒に散歩に出たり、将棋や紙飛行機で一緒に遊んだり。各回の訪問後、子どもたちだけでなく、先生、自治会長、民生委員、社協職員、私たち関大チームも振り返りと今後について話し合う。これぞまさしく協同での学びあい、地域に根ざしたアクティブラーニングだ。



ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。