ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

地域のお宝をみんなで発見

関西大教授 所 めぐみ




 20年近く前、あるまちの民生委員さんたちと地域のどのようなところに高齢者が集まっているのか、地図を広げて話し合った。高齢者に届けたい情報が十分には届いていないという認識のもと、例えばチラシや情報冊子を置かせていただくなど、どういったところに情報提供の協力をしていただいたらいいのか探ることが目的であった。

 みんなでわいわいガヤガヤ、あそこはこんなだ、ここはこんなだ。参加された方々みながご存じの所もあれば、へーそうやったんやという新たな発見もあった。その際に気づいたことがあった。上がってくる情報は、何かがあればいいではなく、高齢者にとってどういう状況だといいのかということを示唆するものであった。あるお肉屋さん。ここは食べやすいようまた料理の手間も省けるよう細かくお肉を切ってくれたりする。ある八百屋さん。近くであれば買ったものを届けてくれる。商店街の中にある手芸屋さん。お店の中にテーブルがあって、そこで店主とお客さんたち(どうも必ずしもその日に商品を買っている人ばかりではない)あるいはお客さん同士でおしゃべりができる。クリニックや整骨院は、腕がいいとかよりもトイレを気兼ねなくつかわせてもらえるとか、治療の前後にしばらくいてもせかされることなく他の来院者とはなしができるなどである。そういったお店などはまさしくそのまちに暮らす高齢者にと?て地域資源、地域のお宝だ。また民生委員さんや福祉委員さんたちが、住民として高齢者の方たちへの声掛けや見守りをする中で発揮されている、まちや人の観察力や情報収集力にも驚かされた。この方たちの発揮される力こそ地域のお宝だと確信した。

 世代や関心の違い、まちで生活する時間帯や自分のもつ関係性によっても、見えてくるものは異なる。だとすればまちに関わる多様な人々とみんなで地域のお宝を発見できたら。こうした対話と発見の場づくりにはまってしまった。



ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。