ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

赤い羽根が身近に

関西大教授 所 めぐみ




 11月は学園祭のシーズン。講義が休講になるこの期間、私のゼミでは3・4回生合同でゼミ合宿にでかける。昨年からは和歌山の有田に行っている。6月に学生たちが一緒に地域の高齢者宅を訪問した小学6年生の子どもたちが、今度は「子どもカフェ」を地域で開催する。今年で5年間続いている取り組みだ。

 おいしいみかんの産地であるこの地域では、みかん農家は収穫で大忙し。それでも地域の方々が顔を出してくださり、子どもたちはそろいのエプロンとサンバイザーをかぶり、今年は2日間で700人を超えるお客さんをおもてなしすることができた。実はこの取り組み赤い羽根共同募金の助成を受けている。子どもたちは年間を通じたふるさと学習・防災学習・福祉学習の中で、共同募金についても学んでいる。

 赤い羽根共同募金は民間の運動として、戦後間もない1947(昭和22)年に市民主体の取り組みとしてスタート。70年の歴史がある。都道府県ごとに行われていて、災害の時などの例外を除き、集まった募金はその県内で使いみちが決められている。つまり、自分が寄付した地域で役立てられている募金なのだ。

 赤い羽根を知っていて募金をしたことがあっても、それがどのように使われているのかを知る人は少ないのではないだろうか。歴史ある活動であるが残念ながら募金額は減少してきている。学生たちは、子どもたちやカフェに来られる地域の方々にこの募金について楽しく知ってもらおうと、赤い羽根のクイズ大会を企画した。数回のゼミの時間を費やして5問を考えた。その間、有田はもちろん自分たちが暮らす地域での活用のされ方を知り募金活動への関心が深まった。

 子どもたちの助けもあってクイズは盛り上がった。最後の問題は、一人10円寄付したとして、何人の寄付がこのカフェを支えてくれているか。金額ではなく支えていてくれる人の数で示した。多くの人の思いがいかされていることが参加者に伝わったと思う。



ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。