ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

協働の先にめざすもの

関西大教授 所 めぐみ




 「協働なんて行政にやらされることやで」。地域福祉活動計画の策定に関わっているとある市で開催された、住民組織や関係団体が集まっての福祉のまちづくり会議。その場での参加者からの一言である。会議に先立って、個々の団体にヒアリングを行っていた。多くの団体は、他団体との連携や協働を進めることに関心を持っていたし、その一方でそれがなかなかできておらず、できれば進めていきたいと語っていた。先ほどの発言は、ヒアリングの段階で「協働で仕事が増える、協働は負担である」との声を出されていた方からであったが、このような「協働」に対して否定的な意見、「やらされ感」もある。

 国は「地域共生社会」をめざすとして、住民の地域への関心を高め、関係団体や事業者ら、そして縦割りをなくした行政と一緒になって、地域で孤立している人たちを地域で支える政策を進めようとしている。自分たちの課題として、複合的な課題状況に包括的に対応していく。「我(わ)が事丸ごと」がキャッチフレーズだ。多様な地域福祉の主体の協働が必要となる取り組みである。

 そもそも「協働」とは何か。「きょうどう」には漢字で表す「共同」「協同」「協働」の三つがある。「協働」は古い辞書には載っていなかった。今では地域福祉やまちづくりでは、この「協働」が頻繁に登場する。その意味は、同じ目的のために複数の人や団体が対等な立場で協力して働くこと。対等であるけれども、そこに集まった人や団体の立場が異なり、また、それぞれが異なる活動をすることに意義があるとされる。いずれにせよ「協働」は方法やプロセスであり、なにをめざすのか、つまり共通の目的が共有されていないと、自分たちが「協働」の主体にはなりえない。また同じ目的のためにそれぞれの力を生かしあえることが「協働」であれば、お互いをよく知っていること、お互いの力が発揮できる場づくりを含めた環境や仕組みづくりがとても重要だ。



ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。