ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

「尺八慰問団」の楽しみ

弁護士 尾藤 廣喜






 京都は伝統文化を大事にし、伝統が身近に根づいた街であるといわれてきました。華道、茶道、能、狂言などいずれも京都に家元があります。私が学生時代から楽しんでいる(励んでいる?)尺八も同様で、最も多くの門人を持つ都山流尺八の家元(宗家)も京都にお住まいです。とはいえ、他の伝統芸能と比べて、尺八が市民に身近な存在かどうかと言われると疑問で、「生の尺八を聞いたことがない」と言われることも少なくありません。私たちは、そんな状況を何とかしたいと思ってきました。

 そのためには、まず、比較的尺八になじみやすい高齢者を中心に親しんでいただくことが大事と、平成17年7月から、都山流京都府支部の有志が「慰問団」を作り、ボランティアとして社会福祉施設で演奏活動を始めました。曲目は、誰もが親しんでいる「春の小川」「荒城の月」「朧月夜」「花」などの童謡、唱歌や「川の流れのように」「北国の春」「祇園小唄」などの懐メロを聴いていただき、ともに歌い、「八千代」「朝の海」の本曲(尺八だけのために作られた曲)を鑑賞していただくというものです。

 この企画は大変好評で、平成17年から平成29年まで延べ939回、年平均で72回も楽しんでいただいています。「懐かしい曲が聴けた」「子どものころを思い出した」との声とともに、「尺八の生の音は素晴らしい」と本曲に感動したとの感想も多く寄せられています。参加メンバーはいずれも師範以上、レベルの高い演奏で、聴かれる方も、比較的自分達の年齢に近い人が懸命に無償の社会活動をしている姿に共感しています。

 このように、「都山流尺八京都慰問団」は、聴かれる方、演奏する方の双方にお互いの響き合いによる「楽しみ」と「感動」をもたらしています。皆さんも一度、「尺八慰問団」を楽しんでみませんか。申し込みは山添妖山(やまぞえようざん)さん=075(461)8703=まで。



びとう・ひろき氏 1970年京都大法学部卒。70年厚生省(当時)入省。75年京都弁護士会に弁護士登録し、生活保護訴訟をはじめ「貧困」問題について全国的な活動を行っている。