ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

めざせ!「DKB48」!

立命館大教授 津止正敏



  あなたの介護体験を社会の共有財産にしよう!

 「男性介護者と支援者の全国ネットワーク(男性介護ネット)」の総会(3月11日)で、介護体験を社会に発信する活動をシステム化しようと「男性介護語り部バンク」の提案がなされた。あの国民的アイドルグループAKB48の向こうを張って、DKB48=男性介護(D)語り部(K)バンク(B)=だ! と言う声も上がって随分と盛り上がった。1年間の試行を経てネットワーク10周年の来年3月に正規にスタートする。

 男性介護ネットは2009年3月8日に発足したのだが、会員はもう1000に迫り、各地で活動する男性介護の会や集いは私たちが知りうる限りでも150団体を超えている。このネットワークの活動の柱になっているのが、介護体験を「書く/読む」プログラムだ。社会の共有財産ともいうべき介護体験記はすでに第5集まで発行し、いまネットワーク発足10周年を記念しての第6集の発行に向けた募集を始めている。

 今度の語り部バンクの提案は「書く/読む」に続く、男性介護ネットのもうひとつの力のある活動として社会化しようというものだ。「語る/聴く」プログラムだ。もともとこの活動は、私たちの総会や各種イベントにおいて著名人の講演の後に、「リレートーク」と称して、会員数名の介護体験を5分程度でスピーチしてきた取り組みを源流としている。このリレートークは、聞き手の圧倒的な支持を得ていつしかネットワークの名物となり、メインの講演をしのぐほどのインパクトあるプログラムに育った。さらに全国各地に広がったネットワークには「私の介護体験はきっと誰かの役に立つ」と語る多くの仲間も集ってきた。男性の介護体験者という有為な介護語り部の存在に多くの人が気付いてきた。ネットワークはその人材の宝庫だ、とも。

 だから、面白おかしく流行りに乗じてはしゃいでいるのではないのだ。でも、めざせ! DKB48! といって明るく元気に取り組めたら、なおいい。




つどめ・まさとし氏
1953年、鹿児島県生まれ。立命館大学教授。大学院社会学研究科修士課程修了。
京都市社会福祉協議会(地域福祉部長、ボランティア情報センター長)を経て、2001年から現職(立命館大産業社会学部教授)。2009年3月に「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」を発足させ、事務局長を務める。著書に『ケアメンを生きる−男性介護者100万人へのエール−』『男性介護者白書―家族介護者支援への提言−』、『ボランティアの臨床社会学―あいまいさに潜む「未来」−』、『子育てサークル共同のチカラ−当事者性と地域福祉の視点から−』など。